ビジネス

2021.06.09

第一印象が悪いと、資金調達に苦労する

これまでにスタートアップやファンドのために数百億円もの資金調達をしてきましたが、その中で私が非常に重要だと感じるようになったのが「タイミング」です。

市場のタイミングやビジネスのタイミングなども重要ですが、それよりもっと細かいところで、「資金調達のためのミーティング」自体のタイミングにも注意を払うようになりました。

相手が投資家である場合に限らず、誰かに評価される際には初回のミーティングが何よりも重要です。最初に相手に与える印象が、その後の関わりの中で長く影響し続けるからです。

この心理効果は「初頭効果(プライマシー効果)」と呼ばれていますが、要するに最初の経験や情報が最も長期記憶として定着しやすくなるという現象です。これは初回の情報を整理するのに脳の処理能力が最も駆使されることが原因とされています。

そのため、私たちは最初に会ったときの第一印象に結びつけて相手を常に評価してしまう傾向があり、後からその印象を変えるのは非常に難しいのです。

皮肉にも、その悪印象を与えてしまっているのが自分自身である場合、私たちは寛容に理解を示します。疲れていた、なにか別のことでストレスを抱えていた、Zoomで不具合があったなど、失敗の原因がすぐに思い浮かびます。確かにそれらのどれもが本当に原因だったのかもしれません。

しかし、そうした共感や理解を他者に向けるとなると、途端に難しくなります。最初の印象がその人の全てだと、つい思い込んでしまうのです。

実際、この心理効果はあまりにも強力なので、誰かに悪い第一印象を与えてしまった場合、改善しようと努力するよりも諦めて次に進んだほうがいいという考え方もあります。

公平さに欠ける心理ですが、厳しい現実として受け止めるしかありません。私も投資家だけではなく、起業家とのミーティングの際にも、なるべくこのバイアスの存在を意識するようにしています。

第一印象に影響する可能性のある要因は数え切れないくらい存在し、それは双方について言えます。起業家がストレスなどで疲れていることもあれば、私も同じように不調を抱えてミーティングに挑まざるを得ないことがあります。様々な要素が起業家のプレゼンテーションに影響し、私のほうでも、プレゼンを理解して的確なフィードバックを返す能力に影響してきます。

理想を言えば、常に100%の万全な状態で鋭く質問やアドバイスを返したいと思っています。しかし、私も人間なので、いろいろなことが原因でミーティングに全力で集中できなくなることがあります。
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文=James Riney

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