社会的マイノリティの眼差し

名古屋入管で収容中に亡くなったウィシュマさん(左)今回の入管問題で、見落とされがちな重要な視点とは(弁護団提供)

2016年から「横浜インターナショナルユースフォトプロジェクト」という長い名前のプロジェクトを手掛けてきた。フォトジャーナリストとして私が写すのではなく、様々な外国につながる中高生にカメラを持たせ、彼らの世界を内側から可視化する。

このプロジェクトから生まれた写真集『横浜(koko)─「外国につながる」ではひとくくりにできない中高生の作品集』(明石書店)という、これまた長い名前の本が4月30日に出版された。

今までこのプロジェクトに参加した中高生の中には、難民申請をしていたが認められず、自国とは別の国に一時避難した生徒がいる。

最近注目されている、法務省出入国在留管理庁(以下「入管」)の外国人への対応のひどさをニュースで見聞きする時、強制的に出国させられて自国にも帰れなかった18歳の生徒が、いまどうしているのか気になって仕方ない。


『横浜(koko)─「外国につながる」ではひとくくりにできない中高生の作品集』表紙

以前からクルド人難民の人達への対応の酷さや収容所内でのハンガーストライキや自殺について報道され、最近では支援者や研究者からの訴えもSNSで目にすることが増えている。スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんの収容中の死亡事案により、さらなる入管への批判と対応改善への声が広がっている。

与党が反対を押し切って通そうとしていた出入国管理法の改正案を今回国会で見送られたのも、入管内の人権意識の低さが問題ではなく、「強行すれば選挙に負けるから」と、ますますこの国のリーダーたちの意識の低さをひけらかすことになった。

ウィシュマさんのような管理者によるネグレクトとみられる被害者が増えないためにも、法務省全体と入管関係者の人権意識の向上が急務なのは間違いないが、ここでは彼女の死によって浮かび上がった別の深刻な問題について考えたいと思う。

DV被害者を守る パブリックヘルスの視点


ウィシュマさんの日本の生活を辿っていくと、付き合っていた男性からの暴力が浮かび上がっている。彼女はDVの被害者であったという事実をスルーしている記事は多い。少しだけ触れているニュースもあるが、多くが入管内での彼女に対する非情な対応の方にフォーカスが絞られている。亡くなった原因は入管内にあるから当然かもしれないが、どの報道もDV被害者を守るという視点が全く抜け落ちている。

被害者の滞在期間が過ぎてしまっている外国人である場合は特に、暴力被害に遭ったことから不法滞在の問題へとすり替えられ、別の問題の加害者にされることで、DV被害者としての支援が全く受けられなくなる状態だ。本来なら、暴力の被害者としてケアを受けるべき人が、刑務所のような収容所に入れられ、実際に命を失うまで適切なケアを受けさせてもらえない環境は、とても「おもてなし」を強調できる国ではない。

不法滞在でいることと、犯罪被害者となってしまうことは、切り離して考えなければいけない。なぜなら、すでに悪名高い入管によって、犯罪被害に遭っても助けを求められない外国人、そしてすでに数多くの泣き寝入りを強いられている被害者の数をさらに増やすことになるからだ。

文=大藪順子

人権
この著者の記事一覧へ

PICK UP

あなたにおすすめ