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コロナ禍で働き方や暮らし方が変わる中、心配されていることのひとつが運動不足。テレワークやSTAY HOMEの影響で在宅時間が長くなり、運動どころか歩く機会さえも減っている。そんな状況に警鐘を鳴らしているのが、早稲田大学スポーツ科学学術院の川上泰雄教授だ。

運動不足がもたらす想像以上のリスクや、その解消法について聞いた。

何もしなければ、日々筋肉は減っていく


幼児期にバランスよく運動をした子どもは、脳内にあらゆる動きの引き出しができ、その引き出しがあれば、大人になってから運動した時に、高いパフォーマンスを出すことができるという。では、大人になってから運動に励んでも手遅れということだろうか?

「運動が苦手だからといって体を動かさないでいると、ますます筋肉量が落ちてしまいます。筋肉はある程度負荷を与えると、その負荷に抵抗しようと頑張って肥大したり筋肉を増量したりといったプラスの適応反応が起こります。年齢に関係なく、青年でも高齢者でも、運動をしなければ筋肉は減ってしまうということです」(川上教授)

川上教授は以前、宇宙飛行士が国際宇宙ステーションに長期滞在した場合、体がどうなるかという実験をしたそうだ。無重力の状態を再現するため、被験者に3週間、ほぼ寝たきりの状態で過ごしてもらった。その結果、実験開始から2週間目には太ももの筋肉が14%も減少したという。14日間で14%ということは、1日1%の割合で太ももの筋肉が減ったことになる。通常の成人の場合は加齢により太ももの筋肉が1年で約0.5%減るそうなので、1日で2年分も筋肉が減ったことになる。


川上泰雄教授(photo by Kazuhisa Yoshinaga)

筋量が2年で1%減るのは20~60歳までの間。川上教授の調査によると、60歳を超えるとその減少スピードはいっきに5倍に跳ね上がる。スピードが加速する理由はいくつかあるが、日本の企業は60歳定年制をとっているところが多いことから、定年によって通勤などがなくなり運動量が減ることもその一因と考えられると川上教授は言う。

ということは、コロナ禍で動きを制限され、テレワークが推奨される今、筋量や筋力が落ちるスピードが加速する分岐点が60歳よりも早く訪れる可能性があるということだ。寝たきりとは言わないまでも、このまま運動不足が続けば、体にマイナスの影響が出ることは想像に難くない。

「体重50キロの人の場合、太ももの筋量がペットボトル1つ分くらい、だいたい500グラムくらいにまで減ると自力では歩けなくなり、要介護状態になると推測されます。寝たきりの状態で筋量は14%減るとお話ししましたが、筋力(筋肉の出す力)が減るスピードはさらに早く、2週間で30%程度減少してしまいました」(川上教授)

怖いのは筋肉だけでなく、脳への影響



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しかも、さらに怖いのは運動不足は筋肉だけでなく脳にもマイナスの影響を及ぼすことだそうだ。

「脳は体に『動け』という指令を与える機会が少なくなると、その神経系にマイナスの適応が起きてしまい、思うように体を動かすことが出来なくなるんです。ですから、運動を続けるということは、筋肉を鍛えるとともに、神経系を刺激し鍛えるという意味もあるんです」(川上教授)

運動不足が続くと、体を動かす神経系やバランスの制御力も失われ、若くても靴下をはこうと片足を上げただけで転倒するといった可能性もあるのだ。

text by Kaori Hamanaka(パラサポWEB)

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