武井は24歳で陸上十種競技の日本チャンピオンに輝き、その後ゴルフの経験ゼロでメーカーが主催するキャンプの特待生として米国留学へ。台湾のプロ野球チームでコーチをしたり、本田圭佑氏がオーナーをつとめるサッカーチームEdo All United で監督を務めたり、いまでも毎日のトレーニングも欠かさない。スポーツとは切り離せない人生を送ってきた。
そんな彼が今回のプロジェクトで手を組んだのは、シンガーソングライターの川崎鷹也だ。2020年8月、TikTokで「魔法の絨毯」が大きな話題に。同曲を使った動画が2万7000 本以上アップされ、トータルで約2億6千万回以上もの再生回数を誇る。
意外とも思えるこのコラボでできたのが、プロジェクトを象徴するキャンペーンソングだ。5月5日には、そのショートバージョン(60秒)がTikTokで先行配信される。歌唱には多くのアスリートたちが参加する予定だという。
コロナ禍によるイベントや大会の中止などで、いま、スポーツ業界も音楽業界も苦境に立たされている。しかし、苦しい時に希望や勇気を与えてくれるのもまた、スポーツや音楽の持つ力だ。
発起人の武井と楽曲を手掛けた川崎に、このプロジェクトに込めた思いを聞いた。
──なぜこのプロジェクトを始めたのでしょうか?
武井壮(以下、武井):オリンピックが1年延期されたことは、僕や周りのアスリートたちにとっては、近年経験したことがないほど大きな出来事でした。オリンピック出場って、アスリートにとっては、人生を変えられるチャンス。それが奪われた衝撃は大きく、いまも不安のなかで過ごしている選手は多いと思います。
このコロナ禍で僕が改めて痛感したのは、スポーツって安全で平和な暮らしがあってのものなのだということ。落ち込んだアスリートも多かったはずです。音楽業界でも似たようなことが起きていますよね。ライブやイベントがどんどん中止になって、ミュージシャンだけでなく、支えるスタッフさんたちも苦しんでいる。
しかし、人々が辛いときにこそ力をもらえるのも、スポーツや音楽、そしてエンターテインメントの力ですよね。だって、僕らはただ働いて人生を終えるために生まれてきたわけじゃない。人生って楽しいとか、毎日が幸せだとか、地球って美しいとか、それを感じるために生きているんだから。
いまスポーツや音楽を止めてしまったら、未来に対して大きな損失になる。その歩みを止めないために、いまスポーツ界や音楽界は何をするべきなのか。既存のやり方に縛られず、何ができるのか。大好きなスポーツと音楽を混ぜ合わせたら、何か新しいエンターテインメントが生まれるんじゃないか。そういう思いで、一歩進もうと始めました。