米国で話題の新刊『ザ・クリエイティビティ・リープ』の中で、著者ナタリー・ニクソンは、クリエイティビティを「問題を解決し、新たな価値をもたらすための、大胆な発想や物事への感動(wonder)と、徹底した努力(rigor)を交互に切り替える能力」と定義している。しかし、多くのリーダーは、この資質を十分に育むことができていない。ある調査では、成人の75%が「自分の潜在的な創造力を発揮できていない」と考えており、「職場では、創造的ではなく生産的であるべきだというプレッシャーを感じている」ことがわかった。これでは未来に向かって前進することはできない。
クリエイティビティを重んじることで得られる3つのメリットを挙げよう。
理由1:競争力を確保できる
アドビとフォレスター・コンサルティングが行った調査によると、クリエイティブな企業は、「自社が市場の圧倒的なリーダーの地位にあり、競合他社より高い市場シェアを獲得していると回答する傾向にある」。今後、その傾向は高まるばかりだと私は考えている。
世界的ベストセラーになった『Q思考──シンプルな問いで本質をつかむ思考法』を著したウォーレン・バーガーも同意見だ。バーガーは、クリエイティビティは「いまや、これまで以上に差を生み出す競争上のツール」となっていて、「起業家であれ、大企業であれ、クリエイティブ職の個人であれ、他との違いを際立たせてくれるのはクリエイティビティだ」と述べる。
その一例として、ノースイースタン大学のタッカー・マリオン准教授は、アップルとサムスンの携帯電話の比較を提示する。「両者はよく似ているが、詳しく見ていくと、iPhoneのほうがより創造性に富んでいる」。「例えば、顔認識機能はよりスムーズなユーザー体験を提供する(中略)。創造性がビジネスに必要不可欠であるのは、それが差別化要因であるからだ」。
マッキンゼーによる調査では、クリエイティビティが差別化要因となり、より大きな利益につながりえることが示された。毎年、優れた広告とマーケティングに与えられる、カンヌライオンズ賞。その受賞数などに基づき、マッキンゼーが企業の創造性に点数をつけたところ、最もクリエイティブな企業の間では、本業の収益成長率と株主総利益率が同業他社より高いことがわかった。また、こうした企業はイノベーションを起こすための活動の成果の点数も同業他社より高かった。「クリエイティビティはビジネスにおけるイノベーションの要であり、イノベーションは成長のエンジンである」と、調査は結論づけられる。