クリエイティビティが今後10年間で最も重要な能力になると、IDEOのポートフォリオ・ディレクター、マット・アダムズは述べている。なぜなら「問題が複雑化していくにつれ、解決策の例は少なくなる。私たちは、現在とこれまではどうだったのかではなく、これからどうなりえるのかに目を向ける必要がある」からだ。
リーダーが自分のチームや自分自身のクリエイティビティを育て、未来をデザインしたいと考えるなら、さまざまな戦略がある。クリエイティビティに報いる(例えばインドのタタ・グループの社内表彰で、達成されなかったプロジェクトを讃える「デア・トゥ・トライ(挑戦する勇気)」賞)、クリエイティブな活動専用の業務時間を設定する(例えば、グーグルの「20%ルール」。業務時間の20%を自分の好きなプロジェクトに充てることができる)、クリエイティビティを刺激する仕事空間をデザインする、そして常に正解のない問いを投げかけるといった戦略だ。もちろん、多様なメンバー構成のチームを雇う方法もある。
しかし、リーダーはその発揮を「クリエイティビティ研究室」や「イノベーションセンター」にゆだねてはいけない。ニクソンは『ザ・クリエイティビティ・リープ』でこう述べる。
「イノベーションを起こす場として新しい部署や空間を確保するだけでは、クリエイティブであるべき時と場所と、生産的であるべき時と場所は別だと言っているようなものだ。その発想は正しくない。クリエイティビティは、生産性向上の手段である。だからビジネスに必要不可欠なのであり、ただの飾りのような、ビジネスの本質には関係ないおまけなどではない。組織全体のクリエイティブな能力を育成することは、イノベーションを起こし続けるための唯一かつ最良の方法である」
ジェイソン・ウィンガード◎コロンビア大学名誉学部長及び教授。専門は人的資本管理。ゴールドマン・サックスにてチーフ・ラーニング・オフィサー、ペンシルベニア大学ウォートン校副学長などを経て現職。