入管法改正の問題とは 日本の「難民申請者」が直面する現実と生きる道

入管法改正の反対の声があがるなか、入国管理局や収容施設では一体何が起きているのか。


私が面会でアクリル板越しに会う人たちも、見るたびにどんどん痩せていったり、車椅子でしか動けなったり、精神的に追い詰められ視線が合わなくなったりしていた。

来日した空港から、そのまま収容施設に直接送られる人もいる。安心安全だと思う日本にようやくたどり着いたと思ったら、連れて行かれたのは収容施設だった、と。

彼らは口々にこう言う。「なぜ収容されているかわからない」「いつ出られるかわからない」「外にいる家族に会いたい」と。

無期限の収容は、人間から生きる希望を奪ってゆく。



そもそも帰国できない人を無期限収容することに人権上の問題があり、国連にも指摘されている。けれど、この改正案が成立しても実際のところ、健康保険もなく就労許可もない状態で、収容施設から出されて(「仮放免」という在留資格がない状態)いったいどう生きろというのだろうか。

働いてはいけないうえに、病気になっても病院にも行けない。そしてそれを「監理」するのが、支援者や友人の役割となり、対象者の日常生活を監視・報告する義務を負うことになる。子どもの薬を買うため、日雇いバイトで働いたら? その罰は、本人とその「監理者」に及ぶ。

市民が市民を監視し、国に報告する仕組みが収容施設の外に作られる。「収容されているよりマシだね」と単純に喜べるものではない。

それよりも、世界を見渡しながら、難民として認定されるべき人を適切な仕組みと機関によって認定できる制度に是正してゆくことが必要だろう。

他の国に逃れていたら、難民になれたかもしれない


よく批判だけするのはよくないと言われるが、その点などが盛り込まれた野党案(野党6党・会派)が2月に提案されている。

野党案には、法務省から独立した難民保護のための委員会を設置することや、収容の上限を設け収容の可否を裁判所が判断するという仕組みなどが含まれる。詳細はこちらから読める。

実は、他の国に逃れていたら難民になれたかもしれないのに、逃れた先が日本だったから難民になれない状態の人だって大勢いる。

「同じ地域から、同じ理由で逃れた兄弟や従兄弟たちが、他国ではもうとっくに認定されていて、大学に通ったり仕事をしたり家族を呼び寄せているにも関わらず、僕だけ日本でひたすら認定されるのをまだ待ち続けている」という人もいる。

例えば、ミャンマーから逃れた人たちを、難民として認定した国(しなかった国)を比べてみたい。2016年、ミャンマーから世界各地に逃れた人は、90.3%の割合で難民として認定された(2万1431人)。その年、日本では650人のミャンマー人の難民申請があったが、認定されたのは0人だった。(UNHCR Global Trends 2016より)
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文、写真=渡部カンコロンゴ清花

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