これらの容疑による訴追が実施された地域は、全米56の連邦管轄区に及ぶ。今回の訴追対象となった主な詐欺行為は、給与保護プログラム(PPP)や経済的損害災害融資(EIDL)、失業保険プログラムの制度を悪用して、給付金をだまし取ろうとしたものだ。
米司法省によると、これらの容疑者のうち「少なくとも」120人が、PPP関連の詐欺容疑で訴追されている。ここには、「人件費を水増しした事業主」や「休眠状態にあった企業に事業実態があるように装った」者、あるいは「全く同じ内容の融資申請書を提出した組織的犯罪ネットワーク」などが含まれている。
コロラド地区の連邦検事局とシークレット・サービスは、EIDLプログラムへの「不正な申込」によって容疑者の懐に入った融資金のうち、5億8000万ドルを押収した。
また、失業保険を悪用した詐欺については、「本件に関する連邦法違反行為」の容疑で140人以上が逮捕・訴追されている。
米国では2020年3月以降、新型コロナウイルス対策の給付金を支給するために、複数の法律が制定された。連邦政府は、給与保護プログラムに6000億ドル以上の予算を割き、失業保険の延長措置についても5000億ドル以上を費やしている。
メリック・ガーランド司法長官はこう述べている。「本省がこれまで行ってきた徹底した取り組みは、国家の緊急事態に乗じて、弱い立場に置かれた個人や中小企業から、国民の税金によってまかなわれている資金を奪おうとする者たちに対して、明確かつ誤解の余地のないメッセージを送るものだ」
こうした詐欺の一例として、フロリダ州で訴追されたある男の例を挙げよう。この男は、新型コロナウイルス関連給付金に関連した詐欺的手法によって150万ドル相当をだまし取ったとして訴追された。その手口のひとつは、高齢者施設入居者の身分証明書を盗むというもので、被害者には容疑者本人の母親も含まれていたという。
検察の発表によれば、ジェレミー・セイントビル(Jeremie Saintvil)という名のこの容疑者は、8人分の身分証明書を使ってウェルズ・ファーゴ銀行に口座を開設し、その与信枠を悪用して金をだましとったとされる。同容疑者はさらに、休眠中あるいは虚偽の事業所の名をかたって、給与保護プログラムの申請書を提出した罪にも問われている。