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2021.04.03 11:30

消防隊隊長に聞いた。「不測の有事」にいかに備え、刃を研くのか


だから階級によっても署に待機している非出動時間の心持ちは変わってくると言いながらも、「消防官はみな、『誰かがやってくれるのではなく、自分がやらなくてはいけないと思え』と訓練されているため、待機中の業務モチベーションや緊張感は誰しも強いのではないでしょうか」と内山隊長は話す。まさに『7つの習慣』の第1の習慣、「主体的である」の体現である。

そして、24時間勤務の緊張からの遷移、非番への切り替えスイッチは「妻と4歳の息子」という。「誰にとっても、大切な人のことを思うことが強くなるための秘訣だし、いちばんの切り替え方法ではないでしょうか。また、非番時間でリラックスするためだけでなく、オンの過酷な勤務状況で逞しくある上でも、大切な人への思いは重要です」

駆使される「想像力」


火災現場で文字通り火中に入って行く部下の隊員たちには、建物の外の様子はわからない。外から2階のどこが燃えているのか、火の勢いが激しくなってきているのか、白い煙が黒くなってきているのかを見きわめて、「危ないぞ、下がってもう1回立て直せ」という指示をいかに出せるかが自分の本領だ、と内山隊長は言う。

「時々刻々と変わる火勢を見ながら、危険な場所にいる隊員に状況を周知すること。無線や怒号が飛び交う騒然とした現場でそれを可能にするための準備は、出動のない24時間でも、習慣的にやっていると思います。訓練でも、過去の災害の事例検討でも」

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東京消防庁世田谷署 世田谷中隊長 内山智弘

総務省の消防白書によると、たとえば平成29年中に公務により死亡した消防職団員は18人という。その他の年を調べても毎年、十数人の殉職者が出ている。

「実際に、東京消防庁でも殉職事故は起きています。住宅の2階が燃えている火災現場で、逃げ遅れた人を救出するために隊員が進入、2階に上がったところで、急激に延焼が拡大し殉職事故が起きた。中隊長としてその現場に自分がいたら、どういう指示が出せただろうか」

もちろん、現場の本当のことは「そこにいた人」にしかわからない。報告書や動画、写真などに表われていないことも多い。

「なので、その時に現場で活動した隊員の行動を批評することは決してできません。できるのは、類似災害があるかもしれない未来に備えて、写真に写っていないこと、書かれていない情報を想像しながら、『将来、ここに自分がいたらどうするか』を考えることだけですね。なんといっても中隊長である私からの情報が、進入していく隊員にとっての最も重要なライフラインになるので」
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文=石井節子 撮影=小田駿一

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