米政府の新型コロナウイルス対策チームのトップでもあるファウチ所長は出演したCBSのTV番組「フェイス・ザ・ネイション」で、ワクチンの接種が進む一方で新規感染者が増えることについて、「英国型」「南アフリカ型」「ブラジル型」など、より感染力の強い変異株が複数出現していることが関連していると説明した。
だが、これらの変異株は感染の拡大に「一役買っている」ものの、唯一の原因ではないと指摘。感染拡大を抑制するために講じられてきた措置を緩和したことが、もう一つの要因であると明言した。
感染者数が増加傾向に転じたのは、春休みに入ったこと、そして一部の州がマスクの着用義務を解除したり、すべての行動制限措置を緩和したりしたことが原因と考えられるという。
早すぎる緩和は「危機」の要因
ファウチ所長は、こうした行動制限の緩和は「時期尚早」であるとの見方を示している。3月に入って以降、それまで感染者数の増加がプラトー(横ばい)の状態にあったものの、再び増加し始めた米国と同様、世界各国が「明らかに(感染者急増の)危険にさらされている」という。
所長をはじめ専門家たちは、感染者数の増加のピークとワクチン接種の推進は現在、先を争う状況にあると考えている。米疾病対策センター(CDC)も国内の感染者数が増加傾向に転じたことを「深く懸念」しており、国民に強く警戒を呼び掛けている。
米国では入院患者数と死者数は減少しており、ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、1日あたりの平均死者数は3月26日発表のデータで、昨年11月以来、初めて1000人を下回った。だが、同時に20以上の州で、新規感染者が再び増加。同日に確認された新規感染者は7万人を超え、7日間平均の感染者数は、前週の同じ曜日から約11%増加している。
米国ではワクチン接種の対象となっている16歳以上の人口のうち、34.3%がすでに少なくとも1回の接種を受けている。ジョー・バイデン大統領は当初、就任から100日以内に1億回の接種を行うとの目標を掲げていたが、早期に達成したことを受け、2億回に引き上げている。