3月16日にはジョージア州アトランタ市と近郊の3軒のマッサージ店で銃撃事件が発生。死者8名のうち6名がアジア系女性だったことから、拡大するアジア系住民へのヘイトクライムが最たる形で引き起こされたのではないかと動揺が広がっている。
アメリカ社会においてアジア系住民はどのような立ち位置におかれているのか。アメリカ文学と文化を専門とする早稲田大学文化構想学部教授で、自身も中国系の父と日本人の母をもつ移民二世としてアメリカに生まれ育ったチャン・エドワード・ケイ教授に聞いた。
盛り上がる #StopAsianHate 背景は
急増するアジア系を狙った犯行を受け、アメリカでは#StopAsianHateをスローガンとして抗議活動が行われている。著名人がSNSを通して寄付活動を呼びかけたり、ロサンゼルスやボストンなどの大都市では抗議集会が開かれている。どのような背景をきっかけに、#StopAsianHateは大きな運動となりつつあるのだろうか。チャン教授はこう見ている。
「去年5月、カナダのバンクーバーでアジア系の女性が通りすがりの男に殴られ、地面に倒される事件が報道されていたことを覚えている。少なくとも1年前から、こうしたアジア系住民を対象とした襲撃は恒常的に起こっていた。
でもその後、この数週間以前はアジア系に対するそうしたニュースは大きく報道されていなかった。それがアトランタの事件が起こったことで報道が加熱し、みんなが注目するようになったのはここ最近のことだ」
「Stop AAPL Hate」のサイトの効果も大きいという。Stop AAPL Hateとは、新型コロナウイルスの感染拡大により人種差別的な傾向をもつ犯罪が増加したことを受け、昨年3月に開設されたウェブサイトだ。このサイトには被害に遭った際、いつどのような被害に遭ったか、その経験を投稿することができる。
サイトには開設から1年あまりで、言葉による嫌がらせから暴力を伴うものまで、およそ3800件もの被害事例が寄せられた。3800件という具体的な件数をサイトが公表したことにより事態の深刻さにメディアが気がつき、大きく報道されるようになったとも考えられる。
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しかしチャン教授は、実際には報告されていない被害も多くあるだろうと語る。