注目の写真アプリ「Dispo」のCEO、ハーバード卒の32歳が直面する課題


Dispoというアプリ名の由来は日本では「写ルンです」で知られる「disposable camera(使い捨てカメラ)」にある。2010年代に入り、突然再ブームとなった使い捨てカメラは、エンタメ業界のセレブの間で人気となり、週末のパーティー会場で、ばら撒かれたカメラで撮影された写真を後日、仲間内でシェアするのが流行りになった。

ユーチューブのチャンネル登録者が1800万人を超えるインフルエンサーであるドブリックは2019年6月に使い捨てカメラで撮影した写真をインスタグラムに掲載して注目を集め、その年のクリスマスに「David’s Disposable」というアプリをリリースした。すると、撮影した写真が翌日の朝9時まで見られないという風変わりなコンセプトが話題となり、瞬く間にランキングの上位に躍り出た。


そのアプリの成長を手助けしてくれないかという提案を受けたリスは、すぐさまそのアイデアに飛びつき、David’s Disposableの進化版である「Dispo」のコンセプトをまとめ、昨年5月にCEOに就任した。そして、ツイッターやアドビからトップクラスの人材を採用し、10月にはレディット創業者のアレクシス・オハニアンが主導するシードラウンドで、400万ドル(約4億3500万円)を調達した。

「社会にインパクトを与えたい」という彼の思いは今、Dispoが打ち出すコンセプトの、「Living in the moment(その瞬間を生きる)」という言葉に集約されている。それはインスタグラムなどの写真SNSに投稿される、フィルターで加工した写真ではなく、ありのままの、飾らない姿で人々とつながろうというメッセージだ。

「完璧じゃなくていい」というメッセージ


Dispoには、フィルター機能がなく、小さなファインダーで撮影するため、ライティングや構図を意識した「映える」写真を撮るのは難しい。しかし、その制限と不便さこそが、Z世代と呼ばれる若い世代のニーズに合致するとリスは語る。

「パンデミックの間に支持を伸ばしたアプリは、TikTokやDiscordなどの、リアルな自分を表現することに重点を置いたものだった。若い世代は、オーセンティック(本物)な、ありのままの自分で、つながっていきたいと思っている。Dispoが打ち出す、完璧なんかじゃなくていいんだというメッセージは、人々を勇気づけるし、新たなムーブメントにつながると信じている」
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取材・文=上田裕資

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