テクノロジーとアジア関連の記事を担当

DispoのCEOダニエル・リス

パンデミックの真っ只中で新しいプロジェクトを立ち上げるのは、「絶好の機会だと思った」と、写真SNSアプリ「Dispo」のCEOを務めるダニエル・リスは話す。彼と仲間が、このアプリを立ち上げたのは、米国で厳しいロックダウンが始まった昨年春のことだった。

「打ち合わせはすべてZoomでやっていた。リアルで会ったことがない人と仕事をするのは奇妙なものだけど、良い面は、プロダクトに集中できたこと。週末の夜も仲間と飲みに出かけたりせず、仕事に専念できたしね」と彼は笑う。

1988年生まれの32歳。ハーバード大学在学中にオバマ元大統領のオフィスにインターンとして勤務し、卒業後に最初に就いた仕事がマイケル・ブルームバーグ元ニューヨーク市長の政策アナリストだったという彼は、テクノロジー業界では異色のCEOと言えるだろう。

ダニエル・リスという名前を検索すると、2014年に当時25歳だった彼がアラバマ州で取り組んだ、米国の不完全な医療保険制度に立ち向かうNPO団体の取り組みを取材したニューヨーク・タイムズの記事がヒットする。

格差が激しい米国では、健康保険が整備されておらず、貧しい人々は十分な医療を受けられない。リスは当時、仲間とともに600人の学生ボランティア組織を立ち上げ、オバマ政権が立ち上げた皆保険制度のオバマケアの申請をサポートする活動をしていた。

「黒人や貧困層が多い米国の中西部では特に、お金がないために手術や治療をあきらめる人も多い。そんな状況を変えたいと思って、貧しい人々の申請を手助けする活動を行っていた」

20代の多くの時間をソーシャルイシューとの関わりに費やした彼はその後、西海岸に渡り、スタンフォード大学でMBAを取得したが、その頃を境に、エンタメ業界の仕事に興味を持つようになる。

社会にインパクトを与える仕事


「ハリウッドのエンタメ業界が長年抱えている課題の一つが、ダイバーシティの問題だ。黒人やラテン系、アジア系、性的マイノリティのアーティストには十分な機会が与えられていない。彼らのために働くのはとても刺激的なことだし、社会を変えることにつながると思った」

その後、コロンビア出身の女優ソフィア・ベルガラのマネジメント会社に4年間勤務した彼は、ラテン系や黒人のアーティストたちを世に送り出す仕事を務めつつ、新たなビジネスを模索していた。そして、ある日、以前からの友人のデビット・ドブリックのマネージャーから送られてきたのが、Dispoの前進となる風変わりな写真アプリだった。

取材・文=上田裕資

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