デジタル遺品をサポートする企業は増えているが、スマホのロック解除は非対応のケースがほとんどだ。ウェブシステムの開発やデータ復旧を手掛ける「デジタルデータソリューション」のように検討してくれる企業もあるが、それでも100%開けるわけではないし、解除まで半年以上かかることもザラだという。
この対策法として、古田氏は、スマホのスペアキーを紙などに書いて自作することを推奨している。非常にシンプルではあるが、この方法が「スマホのロックが開けない」問題への一番の解決策であり、デジタル終活において最低限やっておくべきことだと古田氏は言う。
古田雄介氏。手に持っているのは自作のスマホのスペアキー。名刺ほどの厚紙にiPhoneの情報(見た目など。古田氏の場合は「革ケースのiPhone」)とパスワードを記入し、パスワードの記入部分に修正テープを2度貼りして、スクラッチカードのようにしている。これを預金通帳や実印など重要書類とともに入れておくことで、自分の死後、家族に見つけてもらいやすくなるという。
「スマホの財布化」で数十万円の遺産を失う可能性も
古田氏によると、これまで「故人のスマホのロックを開きたい」理由は、「思い出の写真が欲しい」や「知り合いの連絡先が知りたい」などが多かったという。しかし、最近はこれらに加えて、「〇〇ペイ」関連の相談が増えているという。
「ここ5年くらいの間に、PayPayやメルペイ、LINEペイなどといったスマホ決済サービスの需要が急速に増え、デジタル遺品に関する相談も〇〇ペイ関連のものが多くなってきました。『スマホの財布化』が進んだことに加え、金融資産をスマホのアプリで管理する人なども増えており、スマホの重要度がどんどん高くなってきています。それに付随して、『故人のスマホを開きたい』という需要も高まると予想しています」
スマホの重要度は、確かに年々上がり続けている。政府は、給与支払いのデジタル化を解禁する方針を示しており、「PayPay」などスマホ決済事業者の多くがこの準備を進めている。早ければ今春にも規制が緩和される方針だ(「給与デジタル払い 今年春にも」2月27日、日本経済新聞より)。
しかし現状、〇〇ペイの相続方法は見つかりづらい。各社のサポート窓口に遺族側がアプローチして相続方法を確認する必要がある。
「こういった現状を知らないと、『スマホの中に数十万入っていたのに、確認せずに初期化してしまった』などということが起こりかねません。ただ今後は、遺族からの問い合わせも増えて、専用窓口ができたり、マニュアル化されてシステマチックに対応してくれるようになることが予想されます。それまでの間に当事者になってしまったら、こうした正しい知識を知って焦らず行動することが重要です」