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最近日本で行われた自殺の研究が米国各紙で話題になっている。自殺問題の専門家はこれによって悲観的な見方を強めると同時に、この問題に対する理解をさらに深めたことだろう。

早稲田大学准教授の上田路子らの研究によると、コロナ禍初期における日本の自殺者数は過去3年間より少なかったものの、緊急事態宣言が解除された2カ月後、総数は大幅に増加した。数字で見ると、過去3年間の同月の平均より7.72%増加している。全年代中、最も増加率が高いのは40歳未満の女性だった(63.1%)。この研究結果を補足する公的なデータも上がっている。


「コロナによる死者」より多い自殺者数


警察庁の発表によると、日本の自殺者数は10月だけで2153人にのぼった。これは同年の初めから10月末までの新型コロナ感染症による死者の累計数(1765人)より多い。

これは心痛む数字だが、この問題は世界の他の国々から集めたデータの背景と照らし合わせて考える必要がある。米国自殺防止財団(AFSP)の最高医務責任者で、新型コロナ感染症と自殺の関連について調べる国際自殺防止研究会のメンバーでもあるクリスティーン・ムーティエは言う。

「これらのデータは私たちの懸念を裏づけるものだ。パンデミックがこのように長期化すると、そのさまざまなフェーズごとに、人々の心理的反応や社会全体のメンタルヘルス(心の健康)、自殺リスクへの異なる影響が出てくると考えられる」

とはいえ、パンデミックの最初の数カ月間(3月から7月)のデータを見るかぎり、日本以外の高所得国では自殺率の大幅な上昇は見られない。低・中所得国ではまた事情が違うのかもしれないが、そうした国々のデータが少ないのでなんとも言えない。また、リスクは日々変動するため、既存のデータに見られるパターンが時間とともに変化することも考えられる。しかし、だからこそ、事前の介入によって自殺を未然に防ぐことが重要になる。

では、上記のデータは米国にとってどのような意味を持つのだろうか。

日本だけか?


コロラド大学医学部の救急医で、自殺防止の専門家でもあるエミー・ベッツ(医学博士、公衆衛生学修士)の話では、コロナ禍でのあらゆるストレス要因(失業、政情不安、死別の悲しみ、身体的な健康問題など)によって、人々のメンタルヘルスが悪化するのはもちろん、その結果として自殺者が増えることも非常に懸念されるという。米国では他の高所得国と同様、自殺率の顕著な増加は見られないが、その根拠となるデータは最新のものとは言いがたく、地域も限定されている。

ムーティエも同様の意見を持ち、次のように述べている。コロナ禍での自殺率に関する米国全体のデータは得られていないものの、いくつかの州ではデータを公表している(たとえばマサチューセッツ州では増加は見られない)。

翻訳・編集=大谷瑠璃子/S.K.Y.パブリッシング/石井節子

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