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2020.12.27 09:00

米国の「絶望死」 10年で急増 依存症や自殺など

Natalie Board / EyeEm / by Gettty Images

米国では過去10年間で「絶望の病」が急増したとする調査結果が、英医学誌BMJオープンに発表された。

この調査では絶望の病を、アルコール依存や薬物乱用、自殺念慮や自殺行為に関連した診断と定義。対象者を1歳未満、1〜17歳、18〜34歳、35〜54歳、55〜75歳、76歳以上のグループに分けて分析した。

研究チームは、米国の健康保険大手ハイマークの保険に2007〜18年の間に加入し、有効で詳細な請求情報が残されていた約1200万人の情報を分析した。同社の被保険者は、絶望死が多いペンシルベニア州、ウェストバージニア州、デラウェア州に集中している。

被保険者の20人に1人(全体の4%余りに相当する51万5830人)は、対象期間内に絶望の病の診断を少なくとも1度受けていた。うち58.5%は男性で、平均年齢は36歳だった。診断内容は、54%がアルコール関連の疾患、44%は薬物関連疾患、16%は自殺念慮や自殺行為。2つ以上の絶望の病の診断を受けていた人は13%弱だった。

絶望の病と診断される割合は、2009年からの10年間で68%増加。アルコール関連、薬物関連、自殺関連の診断の増加率はそれぞれ、37%、94%、170%だった。アルコールと薬物関連の診断増加率が最も高かったのは55〜74歳で、それぞれ59%と172%だった。

自殺関連の診断の絶対数は他の絶望の病より少なかったものの、増加率は高く、1〜17歳で287%、18〜34歳では210%。全ての年齢グループで少なくとも70%増加していた。絶望の病の診断は、全ての年齢グループで男女ともに、併存する疾患のスコアが顕著に高いことや不安症・気分障害の割合が高いこと、統合失調症と関連していた。

米国人の平均寿命は、2015年から2017年にかけて毎年減少。連続で減少が続いた期間としては1915年〜1918年以来最長となった。また、中年の非ヒスパニック系白人男女の死者数は1999年から2015年の間に急増。こうした早期の死の主な原因は、薬物の不慮の過剰摂取やアルコール関係の病、自殺だった。

米国ではここ数十年にわたり労働者(特に高等教育を受けていない人)の経済状況の悪化や、社会的セーフティーネットの喪失、賃金や家族の収入の減少が起きている。これらは全て、絶望感の高まりに寄与していると考えられている。

絶望の病が従業員の幸福や仕事の生産性に影響を与える恐れは今、かつてなく高まっている。今回の調査は、新型コロナウイルスの流行が起きる前に実施されており、コロナ関連のストレスにより絶望の病にかかる人が増えている可能性は高い。

あなた自身や知り合いがアルコールや薬物の乱用、自殺念慮、うつ病、不安症など心の問題に苦しんでいる場合は、会社の人事担当者に相談したり、関連の非営利団体などに支援を求めたりしよう。

編集=遠藤宗生

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