備えが間に合わなかったときの対処法
デジタル終活において、多くの人が最低限やっておくべきことは「スマホのスペアキーを作っておく」ことだと上述したが、こうした備えをする前に、家族に万が一のことがあった場合には、どう対処すれば良いのか。
「備えをする前にご家族に何かあって、パスワードが分からなくなってしまった場合には、『周辺の情報から割り出す』というアナログ的な方法が、結局のところ解決策として一番有効だと思います」
パスワードは、「すべて個別にするのが理想的だ」とはよく言うが、実際、これを実践するのは難しい。
多くの場合、パスワードには何かしらの共通項があると古田氏は言う。たとえば、車の解除キーやマンションの電子ロックの番号など、6桁であるケースが多いパスワードは、スマホのパスワードと同じ数字に設定している可能性が高いという。
また、スマホに切り替えた際に、2代目、3代目以降も同じパスワードを使用している人はかなり多いと古田氏は話す。そのため、1代目を購入した際の通信契約の書類などに、走り書きでパスワードのメモが残っていた、というケースも少なくないようだ。
デジタル遺品は消滅する?
ますますデジタル化が進んでいく社会において、デジタル遺品は今後、どうなっていくのだろうか。
「今後、預金通帳の存在はなくなり、銀行口座はデジタルなのが当たり前になるでしょうし、上場企業の株は、今すでにすべて電子化されています。そうなると、10年後にはとりわけ遺品を『デジタル/アナログ』に分ける必要はなくなり、デジタル遺品という言葉は死語になると予想しています」
古田氏の話を聞いて、遺品や終活において、デジタルもアナログもあまり大きな違いはないということがわかった。デジタル遺品も、大切なことはメモしたり、わかりやすい場所に置いておくなど、一般的な遺品と同じように整理整頓していくことで、トラブルを防ぐことができる。
デジタル遺品周りの環境はいま、変革の時にある。だからこそ、各業界のマニュアルが蓄積されていく過程で苦労する遺族とならないために、ここ数年間のうちに自分たちでしっかりと備えておくことが重要だ。