コロナ禍が促進「スポーツの多層型競技エコシステム」
従来、eスポーツとリアルスポーツは別のものとして語られることが多かったが、COVID-19はこうした垣根を取り払い、多層型の競技エコシステムを促進するきっかけとなっている。
(上)でも述べた通り、eスポーツと従来のリアルスポーツの間をつなぐものとしてハイブリッドスポーツという新たな競技が生まれつつある。
こうした状況を踏まえると、ある特定の競技・種目についてアスリートの置かれた環境や制約に応じてシミュレーションスポーツ=eスポーツ、ハイブリッドスポーツ、リアルスポーツを選択できる状況が重要であり、こうしたあらゆる層のアスリート及びファンをいかに取り込んで行くかという視点がスポーツ組織には求められる。
●スポーツの多層型競技エコシステム
出所:PwC分析
2020年に世界を襲ったCOVID-19はスポーツ界に非常に大きな影を落とした。多くのファンをスタジアムやアリーナに集め、ある意味、密集とそれが生み出す熱狂を前提とするスポーツコンテンツにとって、この衛生上の危機は最悪の組み合わせとも言える。
だが、ここで得られた教訓は、一部のコアなスポーツファンの熱狂に支えられることを前提としたスポーツビジネスでは無く、これまではスポーツに触れること、すること、みることが叶わなかった人たちを取り込んだ新しい形のスポーツエコシステムを模索する必要性に気付くきっかけとなったのではないか。
このような新たな価値観に基づきスポーツエコシステムを創造するという、スポーツ界にとっては難しくもあるが後世に残るであろう転換点に立ち会えることに感謝しつつ本稿のまとめとしたい。
>> コロナ禍がトリガー引いた「スポーツ産業の変革」リーダーたちはこうみている|PwCスポーツ産業調査(上)
>> 加速する「スポーツメディア・コンテンツの複雑化」大いなる再統合の時代へ|PwCスポーツ産業調査2020(中)
菅原政規◎PwCコンサルティング合同会社シニアマネージャー。2005年より現職。中央省庁等の公共機関に対するコンサルティングに携わり、調査、業務改善、情報システムに至る案件を多く手がける。近年は、スポーツ政策及びスポーツ関連企業・団体向けのコンサルティングを実施。PwCが毎年発行する「PwCスポーツ産業調査」の日本版監修責任者。早稲田大学スポーツビジネス研究所招聘研究員。