COVID-19による影響や見通しもまだまだ不透明な状況の中で、各国のスポーツ産業界のリーダーたちはどのような見通しを持ち、どう変わろうとしているのか──。
ようやく世界のスポーツが再開の動きを見せた2020年6〜7月に実施され、50カ国・700名を超える回答を得た、昨年度の調査の要点を3回に分けて、紹介する。
>> コロナ禍がトリガー引いた「スポーツ産業の変革」リーダーたちはこうみている|PwCスポーツ産業調査(上)
>> スポーツ業界は「eSports」とどう付き合うべきか?|PwCスポーツ産業調査2020(下)
視聴者行動の変化は決定的 一方日本では━━
近年、スポーツコンテンツを視聴する環境は大きく変化している。
従来型の地上波及びケーブルテレビに加え、DAZNやAmazon Prime、HuluのようなOTTプラットフォーマーの提供するコンテンツ、リーグやチーム自らが動画配信などを行うD2Cコンテンツなど、コンテンツを提供する主体や媒体に様々な組み合わせが生まれている。
このような変化は、ここ数年の我々のレポートでも取り上げてきたが、今年の調査結果ではこの変化が決定的ものとなって表れている。従来型の地上波及びケーブルテレビのコンテンツを離れた視聴者はどこに向かっているのだろうか。
・スポーツコンテンツの平均視聴時間/週(生放送とハイライト)
出所:PwC分析、IRIS Intelligence | Market Research - 02/2015 02/2020-CAWI-/ベース:最も関心の高い世代トップ2 - 18〜34歳のミレニアル世代(n=4612)、35〜65歳の非ミレニアル世代(n=16544)
生放送及びハイライトコンテンツの視聴方法としては、従来型のテレビでの視聴時間が減る一方でOTT及びソーシャルメディアでの視聴時間が大幅な伸びを示している。
特にハイライトコンテンツでは、OTT、ソーシャルメディアでの視聴時間が従来型テレビの3〜4倍に達しており、OTT、ソーシャルメディアでの視聴が当たり前ともいえる状況となっている。また、生放送コンテンツについても、依然として従来型テレビの存在感は大きいものの、OTT、ソーシャルメディアの平均視聴時間の合計(4:05 + 2:56 = 7:01)は従来型テレビのそれを上回っており、もはや安全なポジションでは無くなってきている。
こうした流れは、特に海外では、ケーブルテレビで有料のスポーツ視聴が行われていた環境を考えると、同程度の金額負担でいつでもどこでも気軽に見られるOTT環境にシフトするのは、ある意味当然であり、今後もこの流れは加速するものと考えられる。
一方で、日本国内に目を向けると、地上波での無料視聴から有料のOTT環境へ移行するハードルは高く、既に一部のコアファンはOTT環境に移行したものの、今後はライトファンの取り込みが課題になるものと思われる。
見えてきたスポーツメディア情勢の方向性 「B2B2C」に向けた動き
各国のスポーツ関係者は、今後のスポーツメディアの情勢についてどのように見ているのだろうか。
近年、権利所有者(協会・リーグなど、コンテンツの権利を有するスポーツ組織)自らがインターネットなどを介して生放送などを配信するD2Cサービスが活発化する動きが見られたが、調査結果によると、こうした動きは徐々に下火となりメディア企業やテクノロジー企業と提携したB2B2Cに変化していくものと予想されている。
B2B2Cに向けた動きとしては、欧州サッカーリーグが大手テクノロジー企業と提携する形で見ることができる。そこでは、単に映像コンテンツを加工・配信するだけでは無く、映像から分析されたリアルタイムの統計情報などを合わせて提供することでコンテンツの価値を向上させる取組みとなっている。
・スポーツメディア情勢は今後3〜5年間にどう変わる?(回答者の割合、2つのうちいずれかを選択)
出所:PwC分析、n=660