昨年度は、ようやく世界のスポーツが再開の動きを見せた2020年6〜7月に実施され、50カ国・700名を超える回答を得た。
COVID-19による影響や見通しもまだまだ不透明な状況の中で、各国のスポーツ産業界のリーダーたちはどのような見通しを持ち、どう変わろうとしているのか──。
今回は(上)(中)とお届けしてきた調査要点の最終回として、スポーツ産業とeSportsの付き合い方について、論じていく。
>> コロナ禍がトリガー引いた「スポーツ産業の変革」リーダーたちはこうみている|PwCスポーツ産業調査(上)
>> 加速する「スポーツメディア・コンテンツの複雑化」大いなる再統合の時代へ|PwCスポーツ産業調査2020(中)
高まるeスポーツに対する期待、課題は?
近年、eスポーツに取り組むスポーツ組織が増えている。
今回の調査でも、実に61.0%が何らかの形でeスポーツに関与していると回答している。また、その成果についても約半数(期待を上回る 18.5% + 期待どおり 31.3% = 49.8%)が既に一定の成果を挙げていると認識し、他33.1%も “まだ期待には届いていないが有望” と回答しており、eスポーツに係る取組みの成果が認められつつある状況となっている。
ただし、そもそもスポーツ組織がeスポーツに期待する成果・メリットは意見が分かれるところであろう。
成果として最も分かりやすい“新しい収益源”としての役割も一定の割合(65.7%)を占めているが、本調査で挙げられたメリットは“新しいファン層との接触”(74.3%)、“新しいビジネスパートナーの獲得”(71.9%)といった、外部とのコミュニケーションツールの一環としての成果を期待する声が大きかった。
●権利所有者にとってのeスポーツのメリット(上位2つ(「平均以上」と「非常に高い」)を選択した回答者の割合)
出所:PwC分析、n=385
このように、スポーツ組織にとってもより一層の活用が期待されるeスポーツではあるが、どのような課題を抱えているのだろうか。
改めて述べるまでもなく、有効な収益化戦略の開発が求められていることは当然のことながら、戦略を実現する前提として、“魅力あるコンテンツやストーリーの作成”、“最適な試合や大会形式(フォーマット)の選択” が必要とされている。
現時点では、eスポーツの収益化モデルを確立させたスポーツ組織は見当たらない。また、スポーツ産業界の従来の収益獲得策がeスポーツ市場においても同様に有効かどうかはまだ見通せない状況ではあるが、eスポーツが無視できない存在となりつつある今、スポーツ組織は自らeスポーツ独自の収益化モデルを考案していくことが賢明であろう。
●権利所有者がeスポーツ戦略を策定する際の課題(上位2つ(「重要」と「非常に重要」)を選択した回答者の割合)
出所:PwC分析、n=385