または、期限を過ぎた仕事に対して、遅れの理由が分からず相手に苛立ちを覚えることもあるだろう。隣で働いている様子がわからないからこそ、仕事のプロセスを共有し、温度感のあるコミュニケーションが必要だ。これはリモートワークでも、オフィスワークでも大切な「心がけ」の話である。
メールの返信には、1本目、2本目の間に、1.5本目のメールが存在している──。
仕事において大事なのは、どれだけ相手に、「待たされた」という感覚をもたせないかだ。同じ1週間をかけて同じ答えを出したとしても、「1週間も待たされた」と思われるか、「たった1週間で、ここまでやってくれた」と思われるか。その差は、この1.5本目のメールにかかっている。
言い換えれば、1.5本目のメールは「気づかい」であり「雑談」であり「ネタバレ」だ。
リモートワークが進むなか、日常の業務に欠かせないメールやMicrosoft TEAMS、Slackというデジタルツールに、「あなたをいつでも気にかけていますよ」という温度感をプラスして送ることは、これからより一層意識すべき大切なコミュニケーション作業だと、私は思う。
エンタメ≠ビジネス
第92回アカデミー賞で4冠を達成した韓国映画『パラサイト 半地下の家族』は、カンヌ国際映画祭のワールドプレミアム前に、異例の「ネタばれ禁止のお願い」を出したことが話題になった。
映画も舞台も好きな私は、学生時代から劇団を主宰し、脚本も手がけていた。私が、初めて脚本というものを書くことになったとき、当時師事していた、日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した脚本家の方に「物語を面白くするには、最後まで隠したいネタを、どれだけ途中でバラさない様に物語をつくりあげていくか」だと言われた。
ポン・ジュノ監督自身の要請に呼応し、SNSでは「ネタばれ禁止運動」が起きた。
結末は、見えなければ見えないほど面白い。だが、エンタメでは最大のポイントとなる「見えない結末」は、仕事における日常の業務では、むしろ逆効果だ。
例えば、クライアントからの業務依頼メール。「デザインはいつ上がるの?」「見積もりはいつもらえるの?」「プレゼンはいつになるの?」
私たちは日々仕事に追われ、少しでも早く結末を見せることを要求される。多くの人は、依頼内容、問い合わせ内容に対する答えを得てから、丁寧な返信をしようとする。確かに、正確な答えを得られるまで時間をかけることは必要だ。でも「答えを得るのに、なぜ時間がかかるのか?」をここでネタバレしてしまおう。