ビジネス

2021.02.13 12:30

竹の粉とコーヒーかすでできた弁当箱が人気 プラごみ対策先進の台湾企業とコラボ

「土に還る弁当箱」BENTO box COFFEE


脱プラの動きが広がるなか、代替として注目され始めたのが前述の竹の素材だ。
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「台湾中西部に位置する台中は竹の一大産地として知られ、工芸品などの製造も盛んなエリア。竹製品を作る過程で出る大量の端材を粉末状にしてできた素材に着目したツゥーライは、プラスチックに変わる樹脂としていち早くこれを食器や日用雑貨の原材料に取り入れた」と、ツゥーライの輸入総代理店であるクレンナルー社長の戸田泰雄氏は説明する。

竹は、成長する過程で多くの二酸化炭素と温室効果ガスを吸収する植物のひとつとされる。しかも成長が速く、農薬や肥料を与えなくても自生するため、近年ではサステナブルな素材として家具メーカーのIKEAなど複数の企業が積極的に取り入れている。

さらに、野上氏が開発したBENTO box COFFEEには工場近くのカフェやコンビニで出たコーヒーかすが使われている。
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コーヒーは多くの人に愛される飲み物のひとつだが、その裏では膨大な量のコーヒーかすが食品廃棄物として処分されている。これらを竹の粉と組み合わせて生まれたのが、陶器のような質感を持つダークブラウン色の天然素材だった。

「土に還る」というが、実際どうなのか。ツゥーライが竹繊維の素材で作った容器で土壌化実験を行ったところ、「約半年後から分解が始まった」と戸田氏は言う。さらに「素材開発者を訪問した際に見せてもらった簡易燃焼実験では、木のように燃え、後には白い灰だけが残った」(戸田氏)。

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製品を土に埋めて経過を観察する、土壌化実験の様子

国境を越えて世界の課題に取り組む


台湾の竹産業やコーヒー文化に、弁当という日本の文化を掛け合わせて生まれたBENTO box COFFEEの蓋上部には、台湾の伝統的なアンティークタイルの模様が施されている。そこには台湾と日本、互いの文化をリスペクトしながら、国境を越えて世界の課題に取り組もうというメッセージが込められている。ツゥーライ社長の許文鴻氏は言う。

「BENTO box COFFEEは事業における協業という側面のみならず、日台の文化的な掛け合わせから生まれた好例になった。台湾が持つアップサイクルの技術や自由で柔らかい心と、日本が持つ緻密で真摯な姿勢。両国の良い部分が入り混じり、結果的に1プラス1が3にも4にもなったと感じる」(許氏)

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台湾チーム向けに野上氏が開催した弁当ワークショップの様子。右から3人目がツゥーライの許文鴻社長、4人目が野上氏

プラスチックの代替として、竹繊維を使った素材の可能性は今後さらに広がりそうな気配だ。

ツゥーライは弁当箱と同じ素材でコーヒータンブラーを企画・商品化し、2020年秋には台湾で人気のコーヒーチェーン「ルイーザコーヒー」の一部店舗で販売を開始した。日本国内では、アミカテラが特許を取得し、製造技術を持つ。竹のみならず植物の樹皮などでも作れる素材として、原料ペレットの製造や用途開発などを本格的に強化する。2021年1月下旬には住友商事などがアミカテラへの出資を発表した。

海洋汚染に気候変動。世界はいま、多くの共通課題を抱えている。さらに、コロナ禍はさまざまな現実を私たちに突きつけてくる。解決のためには、国や企業が従来の枠組みを超えて、手を携えることが欠かせない。

私たちのニューノーマルは、自分にも次世代にも嬉しい選択に溢れるものであってほしいと、残り物をお弁当へとリフレーミングしながらあらためて願う。

連載:SDGs時代の、世界をよくする仕事の作り方
過去記事はこちら>>

文=瀬戸久美子 写真提供=sunaho

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