メディア報道以外の要素が株価に与える影響
当然のことだが、メディア報道の影響について検証する際には、慎重な姿勢で取り組むことが重要だ。株価が別の要素と関連している可能性があるからだ。例えば、より規模の大きな企業は、一般的にメディアに取り上げられやすい傾向にある。ということは、この効果を引き起こしている真の要因は企業の規模であり、メディアの報道量ではないかもしれない。
とはいえ、今回の研究ではこの点に関しても調整が行われている。研究者は他の要素を勘案したうえで、メディア報道が株式のリターンを左右する主要因だという結論を導き出している。
メディア報道が株価上昇につながるメカニズムとは
この研究結果を受けて生じる疑問がある。メディア報道が増えることが、なぜ株価上昇につながるのか、というものだ。
この問題について、今回の研究を手がけた2人は、フィリップ・テトロック(Philip Tetlock)の先行研究を踏まえて、2つの主要な効果が働いているとの説を提起している。報道増加が株価上昇につながる際には2つの道筋があるとみられるのだ。
1つ目は、簡単に言えば「無料広告」としての役割だ。メディアの報道が増えれば、その会社の製品やサービスへの需要が喚起されると考えられる。研究者は、この説を裏付ける根拠を見つけている。メディア報道が増えることで、需要が増加し、売上や利益の向上につながる可能性があるということだ。
2つ目の要因として、メディアに報道されることで企業のガバナンスが改善する可能性がある。メディアの注目が集まる状況では、詐欺的な行為に及んだり、実績が伴わないCEOをその職にとどめておいたりすることが難しくなるからだ。2人の研究者は、こちらの説についても、裏付けを見出している。
この効果は現在も有効のようだ。2人の研究者が、データセットをその記事の掲載時期に注目して、1924年から2013年のあいだの前半と後半に分割して調べたところ、この効果は1974年以降も、それ以前と同様に働いていることがわかった。
さらに2人は、最近におけるメディアからの注目について検証するため、2009年から2014年までのウィキペディアのページビューを調査した。すると、ウィキペディアのページに向けられる関心度も、その後の株価の動きに連動する、優秀な指標になっていることがわかった。
こうした研究結果から、この効果は今でもまだ存在しており、NYTによる新聞報道だけでなく、企業が注目を集める、さまざまな情報伝達の形にまで広がっていると考えられる。