アメリカ議会襲撃は阻止できた? 今も残る違和感

1月6日、国会議事堂前に集まったトランプ支持者ら (Getty Images)


アメリカ国会議事堂襲撃
議事堂を襲撃して、連邦警察に取り押さえられる抗議者ら (Getty Images)

治安関係者らはメディアなどで、当局者は「自国民に強硬な取り締まりを行うのを避けたかった」「準備不足だった」「トランプ支持者らがあまりに多勢だったために止められるレベルではなかった」などと説明している。だが本当にそれだけなのか、疑問も残る。

ネット上では、議会の警備員や警察が、トランプ支持者らを止めることなく建物の中に素通りさせている動画も出回っている。中には侵入者と一緒に記念撮影に応じている警察の様子を写した動画も。

アメリカの首都で取材しているとわかるが、ホワイトハウスや連邦議会など政府の主要な建物は常にテロの危険性があるために、普段から厳重な警備が敷かれている。またデモなどイベントなどがある際には、すでに述べた通り、さらに警備を増やしたり、フェンスを追加するなど警戒が高まる。冗談でも近づこうものなら撃ち殺されても仕方がない──そんな空気すらある。

にもかかわらず来ると分かっていた人たちに侵入を許したのは、やはり腑に落ちないものがある。

少なくとも、テロ集団に対峙するような強硬な対策が取られなかったのは事実だ。

ちなみにDCの中心部は通信ネットワークがかなり整備されており、当日議会周辺にいた人たちの身元は簡単に突き止められる。また動画などをシェアしている人も多く、顔認証もしやすい。そのため、暴徒らの多くが逮捕などされるのは時間の問題となるだろう。つまり問題が起きた後始末は難なくできるという計算はあった。

議会が暴徒に襲われるのは、想定内だったのかもしれない。きっちりと、トランプ政権を終わらせるための。

トランプを罷免すべき、と沸き上がる声


こんな事態を引き起こしてもまだ、トランプ支持者たちの暴走は止まらない。1月8日には、共和党の重鎮でトランプを見放したリンゼー・グラム上院議員が、ワシントンD.C.のローガン空港でトランプ支持らに取り囲まれて「裏切り者」「ゴミ人間」「今後どこに行っても残りの人生こうやって付け回されるぞ」などと野次られる様子が動画で出回った。

また、同じく共和党の大物であるミット・ロムニー上院議員も、空港でトランプ支持者らに付きまとわれたり、飛行機の中で「裏切り者」と叫ばれる動画が共有されている。

グラム上院議員はこの出来事が影響したのかどうかはわからないが、夜にTV番組に出演し、これ以上国を破壊しないためにトランプを罷免しないよう求めると発言した。

とにかくこうしてトランプ政権は終わる。議会への襲撃事件は、トランプ政権の4年間のまさに「総決算」だったと言えよう。トランプが4年をかけて作り上げてきた憎悪は見事なまでに崩れ去った日になった。

いま議会では民主党議員からトランプを人気終了前に罷免すべきだとの動きが出ている。1月20日のバイデン新大統領就任までに何か「ドラマ」があるかもしれない。ただ少なくとも、トランプ時代が再びやってくることはないだろう。


連載:国際ジャーナリストのアメリカ深層メモ "Eye-opener"
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文=山田敏弘

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