2021年5月独占配信予定のネットフリックス オリジナルアニメシリーズ「エデン」。2体のロボットに育てられた少女サラが世界へ立ち向かうSFファンタジー。監督は「鋼の錬金術師」の入江泰浩
一方ネットフリックスには、そもそもこの「埋めなければいけない穴」がない。納品の期日は制作側に決めてもらって、我々はそれさえ守ってもらえればいいんです。
予算だって、もちろんざっくりした設定額はありますが、目的が明確ならばそこからはみ出ることも許容する。例えば、すごく音楽に凝りたい作品があって、どうしてもあの人に依頼したいが金額がネックになるというのなら、予算はフレキシブルに考えられるということです。
そもそも作品に興味がないといいものはできないので、企画自体に興味があるスタジオと組みます。スタジオ側から「監督はこの新人がいい」「脚本家を探してきて」などの要請を聞きつつスタッフを決めたら、スケジュールや予算に折り合いをつけて、脚本の打ち合わせを立てる、といった流れですね。
僕らが求めているのは、視聴数が取れてほしいということだけ。だから決断が早いし、製作の打ち合わせにいる人数も少ない。意志決定も早いからミーティングも30分くらいで終わります(笑)。
制約が少なく裁量が大きいことで、クリエイター側も思い切った作品作りができているんじゃないかと思うし、きっと楽しいんじゃないかな。実際、出来上がった作品は、期待の200%だったり300%だったりするものも多いです。
──ネットフリックスの参入により、日本のアニメ界は大きく変わってきているように感じます。今後はどのような展開を考えていますか?
ネットフリックスのような配信サービスの参入もあり、日本のアニメ業界はバブル期を迎えています。しかし、同時に制作側の人材不足がより一層深刻化している。求められる作品数が増えても、つくり手のリソースがなければ、ブームは一過性のものになってしまう。そこで、ネットフリックスとしては次世代のクリエイター創出に関わっていきたいと考えています。
例えば、日本のアニメ業界に憧れを持つ海外の学生やクリエイターは山ほどいる。そんな彼らを留学生やインターン生として招き入れてはどうかと考えています。実際に、フランスのアニメーションアカデミーのGOBELINSと提携し、クリエイターを志す海外の学生に留学やインターンの機会を提供するプログラムを昨年から取り組んでいます。逆に、日本の学生を海外に送り出してもいい。
他にも、第一線で活躍したのち引退した60代から70代の優秀クリエイターを講師とした授業を提供するのもいいかもしれないですね。その授業料を僕たちが持つ「ネットフリックス奨学金」なんてものも面白いかもしれない。
クリエイターを志す若者がお金をかけずに技術を学ぶことができ、さらにリタイアした後も業界での活躍が約束されている。そんな仕組みがあると理想的だと思っています。
さくらい・たいき◎ネットフリックス アニメ チーフプロデューサー。2017年入社。アニメ作品におけるクリエイティブを統括。入社前には、櫻井圭記の名でアニメーション制作会社プロダクション・アイジー話題作「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」「xxxHOLiC」「精霊の守り人」の脚本を手がけたほか、スタジオカラー「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズで脚本協力を担当した。