監督を務めたのは、「キングダム」や「アイアムアヒーロー」など、多くの印象的な作品を手掛けてきた佐藤信介。
今回初めてネットフリックスとタッグを組んだわけだが、劇場公開や製作委員会による映画づくりと、世界190カ国での配信が前提のネットフリックスとのものづくりには、どんな違いがあるのか。
佐藤監督に、「今際の国のアリス」の制作過程を通して、クリエイターとしてのこだわりや、ネットフリックスとのものづくりについて聞いた。
──「今際の国のアリス」の制作は、いつごろから始まったのでしょうか?
ネットフリックスのプロデューサーである坂本和隆さんから、「一緒に企画をやりませんか」と声をかけていただいたのが最初です。もう4年近く前になりますね。
2015年に日本で配信が始まってからすぐのころだったので、まだ日本におけるネットフリックスの認知度はそんなに高くなかった。アメリカでは、その前から徐々にいろいろなオリジナルドラマの制作が始まって、僕もニュースを見ながら、ネットフリックスが「一大プロダクションとしての機能」を持っていることに気づいたんです。これはすごく面白いと感じました。
いつか僕も作品をつくることもあったりしてね、なんて思っていたら、想像以上のスピードでオファーがきたというわけです(笑)。
──これまでの映画づくりと、ネットフリックスとの過程にはどんな違いがありましたか?
ネットフリックスは1社制作なので、やりたいことや目指すゴールが非常に明確です。打ち合わせでは、今回はどこを狙って、なぜそこを狙うのかという議論から始まりました。
本来、劇場公開の映画だったりテレビドラマだったり、広く大衆向けにつくる作品の場合は、口当たりをよくするために少し角の落ちたものをつくろうとする傾向がある。でも、今回の「今際の国のアリス」は、反対にエッジが立ったものにしてほしいというリクエストがありました。物語が進むにしたがって、主人公が思わぬところにいざなわれたり、意外な問題に直面したり、足をすくわれて人生を考えてしまうような展開。見ている人をハラハラドキドキさせて、先が気になって仕方ない状態に導くものにしようと。
NETFLIXオリジナルシリーズ「今際の国のアリス」独占配信中
それは、とりもなおさず、そういうものを見たいという渇望が、日本だけでなく世界にあるから。ネットフリックスの視聴者は、エッジの効いた作品を求める傾向にあるということがわかっているからこその企画でした。