『カードキャプチャーさくら』を生み出した創作集団CLAMP、『神の雫』原作者の樹林伸、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』の太田垣康男、小説家の乙一氏、冲方丁、漫画家で『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリらだ。いずれも大ヒットメーカーだが、それぞれがオリジナル企画開発で、ネットフリックスとのプロジェクトに取り組む。
ネットフリックスのオリジナルアニメは、永井豪の傑作漫画を新たに映像化した『DEVILMAN crybaby』やフルCG制作の『ULTRAMAN』といった話題作が続出している。新たな作品が出揃えば、さらになる充実のライナップになるだろう。
25日、都内のネットフリックスで開催された記者説明会では、同社のアニメ チーフプロデューサーである櫻井大樹が今回の施策について語った。パートナーシップを組んだ中からCLAMPのメンバーである大川七瀬、そして樹林伸もゲストで参加し、トークを繰り広げた。
日本のクリエイティブを強化する
櫻井はパートナーシップの目的を、ネットフリックスがアニメラインナップを拡充し、そのなかで日本のクリエイティブを強化するためとする。ネットフリックスは2018年から19年にかけ、国内有力アニメスタジオ5社と包括的業務提携を結んでいる。それがアニメのクリエイティブ参加への第一歩であるとすれば、今回はさらに踏み込んだものになる。
樹林はこの取り組みに参加した理由を、「最初からグローバル配信であること」と、ネットフリックス最大の特徴を挙げた。さらに「テレビ放送はスポンサーありきになりがちで、コードの問題がつきまとう。ネットフリックスのような比較的自由なメディアに、これらを打ち破って業界を変えて欲しい」と話す。
大川は、「CLAMPのメンバーは4人ともネットフリックスと契約しており、話を貰った時はうれしかった」と喜ぶ。そのうえで、樹林と同様に新しいビジネスモデルに対する期待を持ち、「これまでのアニメはブルーレイやDVDでビジネスをすることが多く、そのシステムから逃げられなかった。ブルーレイやキャラクターグッズに結びつかない作品に厳しい面もあったが、ネットフリックスがブレイクになれば」と語る。
5年後、7年後の海外展開では時代遅れになる
両者とも、すでにオリジナル企画が進んでいる。現在、頻繁に打合せを繰り返しているという樹林は、ネットフリックスのスピード感に驚く。そのレスポンスの早さに、自身の動きも早くなるという。
CLAMPのプロジェクトは、キャラクターでの参加とのことだ。すでに20体のキャラクターの発注を受けており、これまで手がけた中でもかなりボリュームがある企画になっている。いずれも作品のタイトルや具体的な内容は、現在は明らかに出来ないとのこと。今後、どういったかたちで映像化されるのかファンの期待が高まりそうだ。
最後に昨今脚光を浴びる「動画配信」について、両名に感想が求められた。樹林は「動画配信のシステムがハリウッドシステムを喰うのでは」と答えた。これまで日本コンテンツが海外を目指すには、まず漫画や小説などをヒットさせ、それがアニメ化されたりする。そこからハリウッドに行こうとしても数年掛かりになるが、ネットフリックスであれば最初から海外につながるというわけだ。「早い方がいい。5年後、7年後では時代遅れになる」と、樹林。
大川は「今はちょうど節目にあるのでいか」と指摘。「製作委員会はいいところもあるが、作品にいろんな意見が入ってしまうことが多い。監督の個性で作れるのがネットフリックスオリジナルの価値」と話す。そして、「いち視聴者としても楽しみにしています」と、コメントを締めくくった。
日本の代表的なクリエイターとの協業を一挙に広げるネットフリックス。それが日本でクリエイティブを目指すクリエイターにとって世界に羽ばたくチャンスとなるのか、パートナーシップによって生まれてくる今後の作品に期待したい。