例えば、楽観的な人は悲観的な人と比べてストレス水準が低く、早期に大きな成功をつかむ傾向にあることが、多数の研究で示されてきた。生命保険セールスの新人が最初の2年間で収める営業実績は、楽観的な人が悲観的な人よりも37%高い。性格がどのようにキャリアに関わっているかを調べた研究からは、特定の性格からキャリアの成功が予測できることが明らかになっている。
5つの性格タイプとキャリアの成功
クリーブランド州立大学の研究チームは職業行動ジャーナル(Journal of Vocational Behavior)に2001年に発表した論文で、神経症的傾向、誠実性、外向性、協調性、開放性という主要5因子、いわゆる「ビッグファイブ」を用い、性格とキャリアとの関係の解明を試みた。
研究チームは、さまざまな職業や組織の従業員496人(男性318人、女性178人)にアンケート調査を実施。統計分析の結果、外向的な従業員は給料や昇進、全体的なキャリアへの満足度が高い傾向にあったが、神経症的傾向(不機嫌さや不安、心配、恐怖、不満など)が高かった人は自分のキャリアに満足していない傾向にあった。
協調性が高かった人はキャリア満足度が低く、開放性の高い人は給料が低かった。人と関わる職業では協調性と給料の間に大きな負の相関関係があったが、人間的な要素が強くない職業では両者に関連はなかった。
性格が変わればキャリアが成功?
2つ目に紹介する研究結果は、ヒューストン大学のケビン・ホフ率いる研究チームが心理学誌サイコロジカル・サイエンス2020年12月号に発表したものだ。この研究では、性格の変化が仕事での成功につながる可能性があることが示された。
研究チームは、2つの若者グループを17歳から29歳前後までの約12年にわたり追跡調査した。結果、キャリアの満足度と成功に最も強く結びついていたのは、情緒安定性と誠実さ、外向性といった面での成長だった。誠実さの向上はキャリアの満足度と結びついていて、情緒安定性の変化は所得とキャリアの満足度と緊密に結びついていた。また、外向性の変化はキャリアと仕事の満足度につながっていた。
社会人の仲間入りする移行期に誠実性と情緒安定が高まった若者は、キャリア初期でより大きな成功を収めていた。これは、さまざまなキャリアで性格の変化がその後10年以上にわたる影響を生むことを示した初めての研究結果だ。概して、性格は変化の有無にかかわらずキャリア初期の成功に重要な影響を与えていることが示された。
この研究結果は、性格は時間をかけて変化できるものであることを示しており、脳は柔軟に変化が可能だという神経科学の考え方を裏付けるものだ。よって、キャリアの成功に向けてポジティブな変化を起こすのには遅すぎるということは決してない。