マネーツリーの資産管理サービスは、連携するサービスの質が高ければさらに使い勝手が良くなる。Kyashもそのひとつだ。鷹取は次のように話す。
「Kyashは2017年4月より提供を開始しましたが、当初から決済の瞬間に使った金額と合計金額が一目でわかるようにしてきました。『財布と同期する』と表現できるデジタルバンキング体験は、ライフスタイルの鏡となって、一人ひとりの価値観や思いを届けることにつながるからです。MoneytreeのようなPFMといっしょに使うユーザーは非常に多いのですが、『キャッシュKyashは “リアルタイム” に明細が反映されるからとても便利』という評価が私たちの目的と合致して嬉しいですね」
こうした「タイムリー性」が今後のお金まわりで非常に重要なポイントとなってくるという。
「そもそも、情報の取得やコミュニケーションはいつでもどこでも素早くアクセス可能なのに、お金だけがひたすら燃費が悪いと言えます。これは世の中のデジタル化の流れに逆行していると言え、たとえ少額であっても『送る・借りる・使う』というお金の根源的なニーズを、手元のデバイスひとつで完結できる利便性を、情報を扱うのと同様のユーザー体験としてあるべきだと思っています」
資金管理だけでなく、単独でVisaブランドのカードが発行できる強みを持つKyash
自らの資産状況をリアルタイムで把握したうえで、手元で自在にお金を動かす。お金を基点とした動きではなく、「自分を基点」としたお金の使い方ができるライフスタイルへと転換できるのが、KyashやMoneytreeのようなフィンテックのサービスを活用する最大のメリットではないか。
それが貯蓄に向かうのか、投資に向かうのかは人それぞれだが、すくなくともサービスを利用することが1歩目だとすれば、「明確な第2歩」が見えてくるのは間違いない。
こだわりを捨て、価値観を変える
フィンテック企業と日本人の相性には、以前から大きなハードルがある。「アプリへの信頼」と「セキュリティ」だ。
海外の投資家との接点が多いKyashの鷹取は言う。
「アメリカでも、アプリやサービスをスケールするもっともいい方法はというと『そんなものはない』と口を揃えて言うのです。意外に思われるかもしれませんが、一番有効なのは、実は家族や友人などの『これ使ってみなよ』という言葉なんです。つまり、信頼できる人からの言葉、そして実際に使ってみた時に信頼できるアプリだと実感できるようにしておくことが私たちの努めなんです」
海外、そして国内のメガバンクなどからの出資のハードルを超えてきたKyashは信頼性に強い思いを持つ。そしてマネーツリーの山口も同様に、個人の不安に対して言及した。
「2013年にローンチ後、まずアップルでアプリの賞をもらったことが最初の飛躍でした。しかし未だに検索の第2ワードには『セキュリティ』と出てきます。マネーツリーは個人と金融機関をつなぐ黒子であり、中立的なプラットフォーマーですが、それは利用してもらうことで信頼を得るしかないと考えていますね」
別々に取材を行ったにもかかわらず、鍵となる部分で両社の一致する発想。支出の捉え方、可視化するメリット、そしてセキュア。フィンテック界をリードする企業である2社には、極め付けの同意見がもうひとつあった。
新しいお金の文化を創る(Kyash)、人々とお金のあり方を変える(Moneytree)という両社のビジョンだ。
旧来の「お金」のイメージを変え(捨て)、お金との新しい向き合い方が始まっている。2021年はスマートにお金を管理する年にしてみることをおすすめしたい。