出費が総じて負のイメージととらえることが良い結果を生むはずはない。鷹取は、次のような表現でお金に対する価値を見直すべきだと説く。
「あるアーティストが、『1イイね、は1円と同じだよね』と言っていました。日本では円という単位ですが、本来の価値は『ありがとう』という感謝の気持ちだともいえます。いつもモノを買っているお店に対して『ありがとう』を届けていると考えれば、もっと前向きになれるのではないでしょうか」
負のイメージの支出に価値を見出すことは無駄遣いを防止することにもなるだろう。お金を使うことがネガティブな要素を持つ日本人の気質。お金を使うことで何かを得たという発想への転換が必要なのだ。
お金の動きを「可視化」すると、ライフスタイルが変わる
お金の流れは意外と見えにくい。現金であれば紙幣や硬貨の増減でわかりそうなものだが、1万円札を崩したらあっというまに使ってしまいお金がなくなった、という経験はよくあるし、電子マネーのチャージの流れ、肉まんを買ったPOINT、明細の反映まで1週間から10日かかることもあるクレジットカードの明細など、入金と出金のバリエーションが多様な現代では、自らの行為がわかりにくさにつながっている。
もちろん、逐次レシートを保管して家計簿をつければ解決できるが、日々忙しいビジネスパーソンにとってはハードルの高いタスクだ。お金の増減の推移をリアルタイムで把握することは、本来かなりの手間なのだ。
そうした状況を踏まえ、フィンテック企業が取り組んできたのが「可視化」だ。
マネーツリーの山口は次のように語る。
「家計簿は、記入する負担が重いので3日でやめてしまう人も少なくありませんし、記入自体が目的となりがちです。人がわざわざやらなくてもいいことを自動化して支出を『見える化』し、理想的な生活をサポートするということを、マネーツリーは創業当初から目指してきました」
現在マネーツリーは、金融機関や会計ソフトなど約60社以上にAPIサービスを提供し、2700社以上(2020年12月24日時点)のサービスと連携。銀行口座やクレジットカードのほか、電子マネーや各種証券、そしてポイントやマイルまで一元管理できる。つまり、スマートフォン1台あれば、自らの資産状況とその動きがすべて把握できる。山口は、この可視化が利用者に大きな意識変容をもたらしていると言う。
現金やカード以外にもPOINTの管理も。あらゆる情報が手元に、かつ自動で手に入る。
「App StoreやGoogle Playストアでたくさんレビューをいただいていますが、『見える化』が起こることがこんなに大きいと思わなかったという声が非常に多い。それによって節約に向かう方もいれば、投資をはじめる方もいますが、当社の調査によれば約1万5000人の回答者の約6割が投資をされているようです。資産状況が把握できることで『これは間違いなく余剰資金』と判断できれば、投資に向かう理由にもなるんです」