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モロッコ・マラケシュにあるホテル「La Mamounia」

窓を開けると、アフリカの空の匂いがする。明け方の茜色の空のグラデーションの先に砂漠やサバンナが広がっているのを感じさせるのは、朝の鳥のさえずりのせいなのか。

アフリカ随一のホテルとの呼び声も高い、モロッコ・マラケシュの「La Mamounia(ラ・マムーニア)」。18世紀にスルタン(イスラム教における君主)が息子の結婚祝いに贈った庭園が元となるホテルは、王室との関わりが深く、今も100%モロッコの地元資本であり、重要事項の決定には国王の認可が必要とされている。

別名「グラン・デーム(貴婦人)」と言われるこの宮殿は、97年の歴史を刻む中で、英国のチャーチル元首相など数々のVIPに愛されてきた。その魅力は、700年もの時を刻むオリーブの古樹の並木、オレンジやジャスミンの花々が香る庭園、エキゾティックなサボテン、そしてそこに集まる鳥たちなど、自然を抱えるホテルとしての生き生きとした姿だ。

スパイスロードの終着地であるモロッコは、古くから手工業品を輸出し、その技でも知られる。扉や天井には、地元のアルチザンたちによる繊細な手描きや石膏細工で華麗な草花模様が施されている。

「快適さ」というラグジュアリー


そんな生命の輝きをまとう貴婦人は、これまでにも4回、その時代を代表する建築家が化粧直しを手掛けてきた。前回のリノベーションから約10年の時を経て、2020年、建築&デザインユニット、ジュアン・マンクのサンジット・マンク氏がレストランやサロン・ド・テ、バーなど、飲食店部分を中心に改装を行った。

「自分の役目は、『今』を加えて未来へと提示していくこと。美術館のように、静かすぎて過去に生きているヘリテージではなく、祖父母世代の記憶を受け継ぎつつも、生き生きとした建築にしたい」というマンク氏は、昨今のラグジュアリーのキーワードは“快適さ”であると話す。

「肩の力を抜いて自然体でいられるのが今のトレンド。ハイヒールでなく、快適なスニーカーで歩き回るように。でも、10万円以上する高価なスニーカーがあるように、快適であることが、ラグジュアリーでないというわけではない。『人が生きたいように生きられる』というのが今のラグジュアリーだ」

マンク氏は、パリの「アラン・デュカス・オー・プラザ・アテネ」など、数々のレストランのデザインも手がけている。そのうえで、「同じことが食にも当てはまる。より軽く、小さなポーション、そしてもちろん、快適であるということが重要だ」という。

そのマンク氏の言葉通り、これまでホテル内のレストランはモロッコ料理レストランの他、ミシュラン二つ星シェフが手がけるイタリアンとフレンチだったが、これをNYを拠点に世界でインターナショナルな料理を提供するジャン-ジョルジュ・ヴォンゲリスティン氏が手がけるカジュアルなスタイルのイタリア料理とアジア料理に一新した。

文=仲山今日子

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