ライフスタイル

2021.01.11 18:00

まるでエデンの園 改装したアフリカ随一のホテル「La Mamounia」


3年前からLa Mamounia内にスイーツショップを構えているピエール・エルメ氏は、ヴォンゲリスティン氏と同郷で25年来の親友。今回レストランを共に作り上げるにあたって会話を重ねたことが、エルメ氏にとっても新境地の開拓につながった。

1年半前、NYにあるヴォンゲリスティン氏のヴィーガンレストラン「ABCv」を訪れたエルメ氏は、「ヴィーガンでもおいしいものが作れる」と感じ、2020年冬に初めてヴィーガンのクリスマスケーキを発売した。

新たなクリエイティブな機会


「コロナ禍で、人々はより一層環境に配慮した選択をするようになり、ヴィーガンを試してみたいと思う人が増えるだろう。おいしいことが大前提だし、ヴィーガンがスイーツの未来であるとまでは思わないが、クリエイティブな機会だと思う」として、卵白の代わりにヒヨコ豆を使ったヴィーガンマカロンも開発中だ。

世界的な健康志向の高まりから、砂糖やクリーム、バターを減らしながらも、同じおいしさが楽しめる、よりヘルシーなレシピにも取り組んでいる。La Mamouniaのショップの定番「タルトインフィニティ」も、味を変えず同じテクスチャーでカロリーを40%減らすレシピに変えるなど、「内側の変革」を始めている。

また、モロッコの女性たちから菓子の作り方を学び、「ガゼルの角」と呼ばれる地元の味を再構築したデザートを提供するほか、La Mamouniaにインスピレーションを受け、オレンジ、オレンジの花、レモン、蜂蜜を使ったケーキをパリの本店でも売り出すなど、アフリカでの展開はエルメ氏の新たなクリエーションに大いに影響を与えている。

美食という意味では、まだ未開の地という印象が強かったアフリカだが、豊かなモロッコの大地から、それは徐々に変わってくるのかもしれない。


エルメ氏の「ガゼルの角」。「イタリアン・バー」では、果樹園の緑を眺めながらデザートやハンバーガーなどの軽食が楽しめる。

農業と漁業に恵まれているモロッコは、人々が穏やかで、他のアフリカ諸国と比べると格段に治安が良いのも魅力だ。日本から見たら、決して経済的に豊かな暮らしとは言えないかもしれない。しかし、タクシーの運転手は「上を見始めたらキリがない。幸せなのは、家族と過ごす時間。自分の暮らしに満足している」と話していた。

コロナ禍で生気を失ったように見える灰色の都会の景色、部屋に閉じこもりがちな生活とは正反対に、ここには自然があり、鮮やかな色彩と、鳥や植物の命の輝きがある。こんな時期だからこそ、「いきいきと生きている」命の輝きを身にしみて感じた。

文=仲山今日子

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