リニューアルにあたり、「イタリアン・バー」の軽食を含むメニューと館内のスイーツ全般を、ピエール・エルメ氏が監修することになった。
バー「ル・チャーチル」は、30年前からこのホテルの顧客でもあり、歴史をよく知るジャック・ネボ氏が創業したキャビアブランド「キャビアリ」の最高級キャビアが楽しめるシャンパン&キャビアバーに変身を遂げ、フレンチラグジュアリーを体現する。
今回新しくジュアン・マンクのデザインで生まれ変わったキャビア&シャンパンバー「ル ・チャーチル」。
ホテルの庭園、地元で獲れる食材で
環境への意識の向上、そしてその土地のものを食べたいという嗜好に合わせ、レストランで使う食材の8割以上がモロッコ産だ。さらにイスラム教が多い地元客への配慮から、肉はモロッコ産のハラールのものに限られる。
食材の仕入れを担当するフランス・ブルターニュ出身のヨアン・ベルナルド総料理長によると、例えば、牛肉はフランスのシャローレ牛と和牛の交配種をフランスから生きたまま取り寄せ、モロッコで肥育したものを使用する。魚は地中海と大西洋、2つの海を持つ恵まれた立地を生かし、日中水揚げされた魚が夕方に届く。冷凍や養殖の魚は使わず、海辺育ちのシェフも満足するクオリティの素材が使われている。
70人もの庭師が、広大な果樹園のみならず、敷地内にあるオーガニックの自家農園を丹精こめて手入れしている。朝食のジュースやお菓子、カクテルなどに柑橘類が幅広く使われている他、料理には、庭で採れたオリーブを絞ったオリーブオイルが添えられる。
身近に新鮮で良質な食材が揃う今の環境に非常に満足している、と語るベルナルド総料理長
ピエール・ジョエムGMが「ラグジュアリーとは、スペースだ」と目を細めるように、7ヘクタールもの敷地には700本のオレンジの木、200本のオリーブの木、5000の薔薇、21種類のサボテン、6種類の椰子の木が生い茂る。オレンジの木の下にはプールサイドにあるようなデッキチェアが配置され、昼寝やピクニックなど、の庭園で楽しめるゆったりとした時間は、まさに「エデンの園」を思わせる。そして、それはコロナ禍がもたらした新しい価値観とも合致する。
いまだ猛威をふるうコロナ対策の衛生管理も徹底している。ロビーの共有施設などは、スタッフが一日に何度も消毒をおこなっている姿を目にした。
ホテル内のレストランを出る時にマスクを忘れた場合、すぐさま銀のトレイに乗った新しいマスクがトングで手渡され、チェックインの際は荷物も消毒、一度使用した部屋は3日間以上あけてから次のゲストを入れるなど、先進国での衛生基準がきちんと守られている「安心感」も、新しい時代のラグジュアリーであるとも言えるだろう。