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2020.12.24 08:30

覇権なき上流社会を味わえる場。リーマン清算人が語る軽井沢ライフ


鈴木:「運命に導かれてきた軽井沢移住」、とてもいい表現ですね。それにしても外資系金融、代表清算人10年といった華々しい経歴をお持ちの冨川さんが、軽井沢移住とはあまりにも激しい変化ですね。

冨川:はい、あまり悩んだり計画に時間をかけたりせずに、思い付きで移住してきましたが、運命だったかもしれませんね(笑)。しかし、本当に、全てが「運命」だったか? 否、「計画的」「偶発的」だったのかもしれません。

鈴木:それはどういうことでしょう?

冨川: もちろん、リーマンの破綻は、噂はされてはいたものの、前例からすると、別の金融機関に救済合併されることが順当な想定だったはずでしたし、これほどまでに私が軽井沢に溶け込めたことも嬉しい誤算でした。

けれど、キャリアを積みながら「必要とされる場所で働きたい」、「輝いて生きたい」と、自分の価値を高めるために結果を出し続けたことが高パフォーマンスにつながり、成果に結びついたのは、外資金融という厳しい業界では、決して偶然や運だけでは為し得ないことでした。

同様に、縁故のない軽井沢に移住を決意したとき、コミュニティに溶け込みたいと、積極的に人と関わることを意図したことは事実です。その結果が、私が軽井沢での居場所を見つけることができたのだとしたら、やはり、それは「必然」であり、「計画的偶発」であり、私自身の「セレンディピティ」なのではないかと思えるようになったのです。

鈴木
:まさにセレンディピティですね。セレンディピティは、実はワーケーション、リゾートテレワークの本質だと思ってます。もう少しお話をうかがえますか? キャリア理論で有名なスタンフォード大学のクランボルツ教授の計画性偶発的理論によると、計画的偶発が起きやすい人は、一般に好奇心・持続性・柔軟性・楽観性・冒険心などの行動特性を持った人だと言ってます。そのあたり冨川さんはいかがでしょうか?

冨川:「持続性」以外の要素は全て持ち合わせていますね(笑)。私は、本来の性格は内気なものの、仕事・職位柄、身に着けてきた社交性と対話力、経歴があり、「新規参入者=移住者」としての立場が、受け入れ側である軽井沢のコミュニティにうまくマッチングしたのでしょう。私を誰かに紹介してくださった人は、「紹介に値する人」として私に期待してくださっただろうし、その期待を裏切らなかったからこそ、さらにその紹介の連鎖に繋げて行くことができたのだと思います。

鈴木:人と人を繋ぐ、まさに明治時代の軽井沢のホテルでのサロン文化、大正・昭和にかけての別荘文化そのものですね。軽井沢には古くから地元にお住まいの方、移住者、二拠点居住、別荘所有者など様々な方がいます。そこには様々なコミュニティが存在します。この人的ネットワークこそが軽井沢の最大の魅力だと思います。
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文=鈴木幹一

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