もちろん、違いは製造プロセスだ。業界の大半が型紙作りや裁断、裁縫を手作業で行っていることを考えると、コストを抑えるには固定サイズで服を作るしかない。安い労働力が利用できる国などで行われる大量生産から脱却し、完全にカスタマイズされたサイズ生産に移行するために必要な技術は、大半の企業にとって手が出せないものだ。
また、純粋な手作業に当てられる労働力を減らし、技術や専門スキルの労働力を増やすことで、先進国の間でもニアショアリング(近隣国に事業活動を移すこと)が可能になるといった効果もある。
アマゾンの狙いは何だろう? それは、ファストファッションと同じ価格で特注の服を提供するシステムの開発だ。アマゾンのことだから、そうしたシステムを開発できたならば、それを他企業向けのプラットフォームとして提供するだろう。これにより、同社はビッグネームが集まるハブとなる。そうなればすぐに、サイズMやXLの服を買う意味はなくなる。ネットショップや実店舗で商品こそ選ぶものの、後日になってオーダーメード版を受け取るような形になるだろう。
ファッションは私たちの消費活動の非常に重要な一部であり、アマゾンは長い間このカテゴリーへの参入を目指してきた。戦略的な動きとしてのポテンシャルは膨大だ。最初の兆候が3年前のボディー・ラブスの買収で、2つ目の兆候が今回のTシャツだとしたら、3つ目は何であれ、到来までそう長くはかからないだろう。