──御社は2017年10月にユーグレナのグループ会社になりました。実現に至った背景をお聞かせいただけますでしょうか?
ユーグレナは私たちと同じ東大発のバイオテクノロジーベンチャーで経営陣との交流もありましたし、「研究成果を使って社会に価値提供する」という文化が我々と一致していました。
加えて、ジーンクエストは私を含め研究者のメンバーで立ち上げたのでサイエンスの部分は強いものの、ビジネス拡大の部分に課題を抱えていました。ユーグレナは健康食品や化粧品といった事業をベースに「健康意識の高い顧客基盤」を持っているので、我々のビジネスが加速できると考えたのです。
ユーグレナにとっても「ミドリムシ」以外のサービス開発を強化する中で「遺伝子解析」に注目していたので、お互いのニーズがマッチし参画するに至りました。
──参画して3年が経過しましたがいかがでしょうか?
ビジネス拡大に関しては、ジーンクエストだけではリーチできない顧客にリーチできており、期待通りの成果を得ています。それだけではなく、「共に成長する」ことができていると感じています。
ユーグレナは東証一部上場企業なので大企業のようなイメージを持っていたのですが、実際はかなりベンチャー的な側面が残っている会社です。体制やルールが完成されているのではなく、いまだにあらゆることをゼロから模索している感じはまさに「ベンチャー」です。
私自身、20名の会社の経営者でありながら、グループ400名規模の会社の経営メンバーになったことで、これまで体験したことのないスケール感の意思決定に携わることができています。また他の経営陣の考え方や経営会議などから多くを学ばせてもらっていると実感しています。
今後も会社、そして個人としても「共に成長する」ことで、ビジョンの実現に向かっていきたいと思います。
「感情の共有」で価値を広げる
──学生時代に起業されて、一番苦労されたことをお聞かせください。
私は就職もしたことがないまま起業したので、一番苦労したのが自分と世間の遺伝子に対する認識ギャップでした。最近でこそ遺伝子解析が病気リスクの認識に使えると知る人が増えましたが、起業した当時は全然知られていなかったのです。
「そもそも遺伝子って何?」「遺伝子解析する意味は?」といった、研究者の私からすれば基本中の基本のことが、一般の方はわからない。わからないゆえに「なんだか怖い」と批判を受けたり、サービスが思うように広がっていかない、という困難がありました。
社会にとって良いことをやろうと起業したのに、なぜわかってくれないんだろう、と思うことは何度もありました。