ビジネス

2020.12.16

アップルが「通信モデム開発」を本格化、クアルコム依存脱却へ

Getty Images

アップルの経営陣はMacへのインテル製チップの採用をとりやめ、独自開発のARMベースのものに置き換えるだけでは満足せず、将来のiPhoneやiPad、そしておそらくMacBookからもクアルコム製モデムを排除し、独自のセルラーモデムを使用しようとしている。

この件の詳細は12月11日、ブルームバーグのマーク・ガーマン記者がアップルの社内ミーティングの内容を伝えた記事で明るみに出た。アップルは、将来のデバイス用に独自の通信モデムの構築を開始し、クアルコムのコンポーネントを置き換えようとしているという。

関係筋によると、アップルのハードウェア技術担当のシニアバイスプレジデントのジョニー・スロウジは先日、従業員とのミーティングでその方針を発表したという。このニュースを受けて、クアルコムの株価は約4.4%の下落となった。

iPhoneの最新機種には、アップルが独自開発したAシリーズのプロセッサと並んで、クアルコム製の通信モデムが登載されている。テック系のニュースに詳しい人なら、アップルとクアルコムが以前、モデムの特許料を巡る問題で争っていたが、2019年のはじめに和解した事を覚えているはずだ。

しかし、アップルが将来のiPhoneやiPadに登載する通信モデムを、自社製のものに切り替えようとしているのは明らかだ。今回のスロウジの発表は全く驚くべきものではない。アップルは2019年にインテルのモデム部門を10億ドルで買収し、自社製モデムの開発を進めてきたのだから。

通信モデムの内製化によって、アップルは外部企業への依存度をより一層減らし、自社のニーズに合わせた研究や設計、生産を進めることが可能になる。これにより、自社のハードウェアを、より緊密に統合することが可能になるだろう。また、クアルコムのマークアップを減らすことで、製造コストを削減できる。

現状ではクアルコムに対して約束した未消化分の発注がまだあるかもしれないし、アップルの内製化に向けた取り組みがどこまで進んでいるかも明らかにはされていない。しかし、ティム・クックと彼のチームが、近い将来、iPhoneやiPadの核となるコンポーネントの完全な支配権を握るのは目に見えている。そのことは、アップルにとっても消費者にとってもメリットになると信じたい。

編集=上田裕資

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