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2020.12.07 07:30

不妊治療の公的助成に拡充の動き。民間の「不妊治療保険」も有効か?


そんななかで出てきたのが、新しい政府主導の支援策だ。2年後の2022年度から、保険適用の拡大を目指すとともに、それが実現するまでの措置として、今年度中にも国の助成制度を拡充する方針だという。

その支援策では、助成対象を法律婚だけでなく事実婚のカップルにまで広げたり、2回目以降の治療の助成額を15万円から30万円に引き上げたりするものもある。また、夫婦の所得は730万円未満までとする現行の所得制限も撤廃される見通しだ。

最大6回までという助成の回数制限についてはまだ流動的で、「子ども1人につき」最大6回に緩和したり、当初3回は40万円にしたりするなど、さまざまな意見が出されている。

助成を受けるにあたっては、領収書の保管は大切だ。確定申告で医療費控除を申請する場合も領収書が必要になる。

不妊治療をとりまく民間保険の現状


不妊治療を行う際のマネープランについて、民間の「不妊治療保険」の利用を検討する人も多い。もし、保険からの給付金を期待するなら、とにかく早めの契約が重要だ。なぜなら、保険金の対象となるのは、特定不妊治療に限られるうえに、契約から2年経過していることを要件にしているのが通常だからだ。


出典:保険会社各社ホームページより筆者作成

不妊治療保険の例は、上表のとおり。考えてみると、保険は本来、偶然の出来事が万一発生した際に不足するお金をカバーし合うという位置づけのものだが、不妊治療は受けたい人が受ける治療であり、偶然性が高いとは言えず、そもそも保険になじまない。

そのため、民間の不妊治療保険では、他の保障と組み合わせたり、1回限りに制限したりするなどの仕組みが取られている。

また医療保険に関しては、「もっと早く入っておけば良かった」という後悔の言葉もよく耳にする。そもそも、妊娠がわかってからの医療保険への加入は難しい。断られるか、あるいは妊娠出産時の入院・手術の給付金を保障対象から外す形での契約となるのが一般的だ。妊娠の前段階にあたる不妊治療を始めた後では、当然、一般的な医療保険に申し込んでも断られてしまう場合が多い。

ただし、最近では、少額短期保険を中心に、不妊治療中でも加入可能な医療保険を扱うところが複数社登場してきている。気になる人は、資料を取り寄せ、費用対効果を吟味してみるのがおすすめだ。

「不妊治療保険」も「医療保険」も、検討の結果、預貯金で備えるという判断もあるだろう。

そういえば、先日相談に来た女性側ががん告知を受けたという若いカップルに、がん治療前に受精卵の凍結保存をしておくことをおすすめしたときに返ってきた明るい反応は、とても印象的だった。

がんは治る時代だ。治療を終えて子どもが欲しいと思ったとき、その可能性を残すために、いまできることではあるのだが、がんへの不安の大きさにそのことに思い至らないことも多い。

政府がいま検討している不妊治療の対策のなかには、がん患者の精子、受精卵の凍結保存をする際の費用負担軽減なども盛り込まれている。これらも含めて、不妊治療への国による助成制度拡充にはこれから大いに期待したい。

連載:ニュースから見る“保険”の風
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文・図=竹下さくら

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