大阪府の発表によれば、9月15日までに新型コロナウイルス感染症で死亡が確認された186人のうち、115人(62%)が、人工呼吸器・人工心肺装置(ECMO)・集中治療室(ICU)などの府が定義する「重症治療」を受けないまま亡くなっていた。
もちろんこの中には、肺炎を発症したが、人工呼吸器等の侵襲的な治療を望まずに亡くなった高齢者のケースも含まれているが、ただ62%という数字はあまりにも多い。
臨床試験で「死亡率の低下」を証明
なぜ、このようなことになったのだろうか。それは、肺炎の管理が上手くなったからだ。
新型コロナウイルスによる肺炎は、ウイルス感染による直接的な肺障害よりも、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)という免疫学的な合併症を起こして重症化する。これはコロナの増殖を止めるために活性化した免疫反応が正常な肺組織も壊してしまうために起こる。
一旦、ARDSを起こすと、死亡に至るケースは多い。免疫の暴走であるARDSに対しては免疫抑制が有効だが、免疫を抑制すれば、コロナは増殖してしまう。免疫抑制は、ARDSを抑制するメリットと、コロナを増殖させるデメリットのどちらの影響が大きいかは、臨床試験をしないとわからない。
7月17日、英国の医師たちは、米『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』誌に、6325人の重症コロナ感染者を、免疫抑制剤のステロイドホルモンであるデキサメタゾン6mg投与群とプラセボ投与群とに無作為に分け、その治療効果を評価した研究成果を発表した。
この研究で、プラセボ投与群の死亡率が29%であったのに対し、デキサメタゾン投与群は23%と、死亡率は(29-23)/29で約21%も改善していた。これは新型コロナウイルスの治療薬の臨床試験で、初めて死亡率の低下を証明したものだ。
その後、重症の新型コロナウイルス感染症を対象として、ステロイドの効果を評価した国際共同研究でも、同様の結果が再現され、9月2日の『米医師会誌(JAMA)』に掲載された。同日、世界保健機関(WHO)は、重症の新型コロナウイルス感染症患者へのステロイド投与を推奨する方針を示した。