コロナ禍で増えるDV 女医が現場で診た被害者の「3つのタイプ」とは

和佐野有紀氏


──これまで医師として、数々のDVのケースを見てきて、被害者はどのように受傷を避けられると考えるか

暴力をふるう人間は概して抑制力が弱い。ただ、人は暴力をふるう前に必ず信号を発信しているはずだ。たとえば、切れやすい、人の話を聞けない、話を遮る、対話の途中でいなくなるなどがそうだ。

被害者が自らの身を護るためには、自身の言動を気をつけたところで、どんな反応をしても相手は攻撃をしてくる可能性が高い。

ならば、そのようなテンションの人を避ける。または、相手がそのような傾向が見られると思ったら、疲れているのだと考え、その人が自由に過ごせる時間をつくってあげるなど、ストレスを溜めない環境を与えるというのも手だと思う。


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──私たち、一般の人々にできることはあるか

先に申し上げたように、このようなDVの被害者たちは、自身の状態を人に話したり、共有することを好まない場合が多く、他の人を巻き込まなくなる傾向がある。

たとえば、殴られてショックなので落ち込む。これまで頻繁に出かけていたところが、出るのが億劫になる。つまり、何らかの行動変容があった場合、気づいてあげることができればいいかもしれない。

また、「恥の文化」が根底にあるのなら、先に恥を共有するのも良い。被害者は自身の身に起こったことが恥ずかしいことだと思っているので、先に自分の恥をさらけ出して、相手が相談しやすくさせるというのも一つの方法だ。

また、被害者にとっては、「関与人口」を増やすというのも有効だ。高齢の夫婦で、女性には喋らせないという旦那さんをよく見る。被害者は女性なのに、加害者の男性が症状や気持ちなどもすべて代弁し、一切本人には話させない。これは完全なるスポイルで、女性にとっては「できない」と思わされているDVだといえる。

もし、このような昭和的な社会デザインがあるのだとしたら、これは早急に変えていく必要があるだろう。その変化への過渡期においても、夫婦間で解決できないならば、ご自身の話を聞いてくれる友人でも知人でも良い、カウンセラーでもいい、親戚でも子どもでも、福祉の人でも良い。とにかく自身に関与してくれる人間を一人でも多く持っておくことで、孤立した関係性から生み出されるDV被害というものを防ぐことができるだろう。

知り合いには言いにくいのであれば、いまDVに関する窓口は多々用意されている。あなたを支えててくれる環境は整っているということだけでも是非知っておいてほしい。

一般社団法人社会包摂サポートセンター|よりそいホットライン
0120-279-338

内閣府男女共同参画局|DV相談ナビ
#8008(はれれば)
0570-0-55210

DV相談+
0120-279-889(つなぐはやく)


(チャットでの相談も可)

最後に。自身を支える大地が乾き切ってしまい、自ずから生じていた亀裂を、見ないふりをして生きていくことにもしも限界があって、どこかの段階で痛みを伴うようになるのなら、新たな大地に根を張ってみるのも悪いことではないと思う。人は絶対に強くなれると信じています。

文=谷本有香

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