「プロスポーツの生中継、全映像を5Gを通してアップロードを実施するのは、少なくとも我々が確認する限り国内初です」。NTTドコモ コンテンツビジネス部スポーツ&ライブビジネス推進室・馬場浩史室長は、しっかりとした口調でそう答えた。
卓球Tリーグ、NTTドコモ、NTTぷららは11月17日、東京・立川で行われたサードシーズン開幕戦において、5Gを活用した試合映像の撮影と伝送を実施した。プロスポーツのライブ映像を、すべての撮影において5Gネットワークを通じて伝送したのは「国内初」だ。
5G活用 ついに重い腰を上げた
各スポーツが新型コロナウイルスの影響を受けざるを得ない状況の中、Tリーグも多分に漏れず3シーズン目を無観客試合で迎えた。報道関係者には箝口令が敷かれ、報道記事にさえ開催会場を明記しないようにリーグからお達しが出るほどだ。
無症状の人からも感染する新型コロナウイルスの特徴を考えると、年内に実施されるスポーツは、試合そのものは早期復活させつつ、今年から商用開始となった5Gを軸に、新体感のスポーツ観戦を具現化、無観客試合を増やすべきだと主張してきた。
ファンを守るという最重要課題をクリアした上で、チケット収入を代行できる新体感観戦をサブスクなど新しいモデルとして実証を重ね、コロナ後のビジネス構築まで進めることができると考えたからだ。
ソフトバンクがホークスを、DeNAがベイスターズを活用し、スタジアムとファンをつなぐ試みもあったが、5Gなどの新技術の活用にまでは至らず、リモートによる応援にとどまったのは、少々残念でもあった。
リモートやテレワークが必然となる中、世の中に広まって行くかに思われた5Gも、観光業や飲食業を筆頭にすべてのビジネスが停滞する折、基地局の設置や5G端末の普及にもブレーキがかかり気味で、具現化へのスピードも減速されているのではないか。
そんな折、2020-21シーズンよりTリーグのスポンサーとなったNTTドコモは、いよいよ重い腰を上げた。
これまでスポーツを生中継する際には、大規模な設備が必要とされてきた。スタジアムやアリーナ内に大きなテレビカメラを数台、もしくは数十台を配置、場外には大きなスペースを必要とする中継車などを配備、カメラからその中継車まで太いケーブルなどが縦横無尽に這う……これまでのおなじみの光景だ。
これをインターネット中継に置き換えることは可能になったが、画角や解像度を落とさずスポーツのLIVE中継を実施するには、信頼性の観点から光回線などのケーブルを使用するのが通例であり、すべて無線で具現化するのは、なかなか「難しい」というのがこれまでだった。