Tリーグ、卓球女子の試合。これは、審判目線の映像。
しかし、映像伝送に5Gネットワークを活用することで、こうしたケーブル配線を必要としない大容量映像伝送が可能となった。構想および計画としては浮かんではいたものの今回、Tリーグの開幕戦において、映像中継をすべて5Gネットワークで実施、「実用化」へ大きく前進してみせた。前述したような大規模設備を必要とせず、スポーツ中継映像の制作コスト大幅削減を実現。つまり、テレビ中継の技術の置き換えが現実のものとなった。
今回は「11台のカメラからの映像をすべて5Gネットワークを通しアップロードしています。これを池袋のセンターに送り、dTVなどにオンエア。一部ではスマホ・カメラを使用し4K映像をお見せできましたし、UGC(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ)も具現化しています」とNTTドコモの馬場氏は言う。
派手さこそないが、大きな飛躍
これまでショーケースとして「5Gの未来」などと題した大規模展示会において、5Gによる遠隔操作で外科手術が可能、危険な土木現場も遠隔作業が可能、XR空間における新しいエンターテインメントの創造などなど、近未来的な理想だけが提示されて続けてきた。それらは「ちょっと先の未来」を提言したに過ぎず、そこに至るまでは現実的な課題がいくつも転がっている。
しかし今回の取り組みは、いま現実の世界で実際に5Gを使用したスポーツ映像配信を演出。派手さこそまったくなく、スポーツ中継業界にとっては小さな一歩かもしれないが、5Gによる夢の実現に向けた「大きな飛躍」と考えられる。
「3G、4Gの時もそうでしたが基地局の設置以上に、(5G)端末の普及に時間がかかっています。来年の3月ぐらいにかけ、この普及にも拍車をかけて行きたいと考えていますが、今回は5Gがスポーツの現場でも、すっかり実用化されていることをお見せしたかった」と馬場氏。
卓球男子、勝利チームの様子。Tリーグ5G生中継で。
NTTドコモとTリーグの映像配信契約は2020-2021シーズンから2023-2024シーズンまでの4シーズン。この一歩から、今後さらに5Gを活用、マルチアングル、360度カメラ、XRのほか、自動でハイライト映像を作る「AIハイライト」や、選手、チームのプレー内容に関するスタッツを自動生成するなどを実現し、観戦体験を最大化する計画だ。
思えば3年前、卓球のプレー映像を撮影、これをAIにより分析し、ボールのスピード、回転数、方向などを解析し、視聴者映像に載せるという構想動画を私自身がドコモ役員にプレゼンした夢の具現化である。実は馬場氏、ドコモに「スポーツ&ライブビジネス推進室」が初めて設置された際、こうした構想の具現化について、議論を交わした私にとって元同僚でもある。
5G世界の到来により、いよいよあの世界が具現化へ向かって動き出したかと考えると、勝手ながら心が踊る思いだ。
連載:5G×メディア×スポーツの未来
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