一方、UPSはマターネット、ウイングコプター、ジップラインといった革新的なスタートアップ企業に投資し、提携することに価値を見出してきました。提携によってリスクを削減し、選択を通じて設計を変更し、顧客のニーズを満たすという、最も得意とする側面に集中することができます。認可の達成と実行については、UPSはポートフォリオ企業に依存することになりますが、ドローンをトラックのように扱うことで、ドローン利用を最適化することが正しい方法なのかもしれません。
2. 既存の物流ネットワークがあるかどうか
UPSとアマゾンは、巨大な物流ネットワークと既存の需要を持っていますが、グーグルにはそれがありません。どのような製品であっても、顧客は必要です。UPSやアマゾンは、ドローン配送に関しては自社が顧客となっていますが、グーグルは、ドローン配送のために、アマゾンやUPSといった標準的な配送ネットワーク以外の企業と提携する必要があります。
ここで真に問われるのは、テクノロジーの統合を目指すサプライチェーン企業と、物流ネットワーク全体の一部を構築し、改良することを目指すテック企業の、どちらを選ぶかということです。これまでのところ、グーグルの配送ネットワークは、小規模企業を対象としたテストに重点を置いており、オーストラリアにおけるブリトーやドッグフードの配送、フィンランドにおける焼菓子の配送、最近では、米国における食料品の配送などが目立っています。
他方、UPSは、フロリダ州の高齢者コミュニティに処方箋薬物流の専門知識を適用し、UPSのパートナー企業は、システムの認可を目指しています。アマゾンは、連邦航空局(FAA)初の無人航空機システム(UAS)統合パイロットプログラム(IPP)を介して、米国で実際の事業活動を試す機会を逃したため、英国ケンブリッジ商品のオンデマンド配送を試験的に運用することができたものの、顧客を対象とした運用テストはかなり制限されていました。
3. テクノロジーにおけるXファクターは何か
米国のドローン配送競争に参加している3大企業はいずれも、技術面で差別化要因を持っています。グーグルXラボからスピンアウトしたウイングは、高解像度マッピング、自律技術、ヘルスセンサーデータなど、急速な変化や応用のための触媒となり得る、あまり知られていない技術や開発中の技術など、グーグルの他の製品との緊密なパートナーシップを活用できます。
商品開発から消費者行動、配送に至るまで、電子商取引に対する明確な理解と電子商取引における優位性こそが、アマゾンの差別化を生み出す源泉となっています。UPSが有するサプライチェーンと物流管理におけるグローバルな経験、消費者と政府の両者からの信頼が相まって、必要とされる社会的受容を促進するためにカギとなる、知恵と特性を提供できるかもしれません。
テクノロジーと配送における3つの巨大企業の競争が、まさに私たちの頭上で激化しています。この競争に勝つのはどの企業でしょうか。
ドローンに関する自社のビジョンをサポートし、加速させるためのふんだんな技術を有するテック大手のグーグルか、他社の最重要商品を取り扱うことで信頼をすでに獲得している、従来型サプライチェーンと物流配送会社であるUPSか、それとも、テクノロジーに精通し、これまで以上に早く荷物を受け取りたいという既存の顧客ベースを持つアマゾンのプライムエアでしょうか。
時間が経過しないと正解は分かりませんが、ドローン配送の革命が、すでに始まっていることは間違いありません。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載、Forbes.comに初出のものです)
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