科学技術の未来、文化について執筆

Sebastian Condrea/Getty Images

4年前、がん専門の獣医師であるMona Rosenberg博士は、甲状腺がんを患った犬の治療を行った。博士は、2年間に渡って化学療法を行ったが、腫瘍が大きい場合、化学療法は必ずしも効果的ではないとされる。しかし、当時は犬のがん治療と言えば、化学療法しかなかった。治療は順調に見えたが、その後リンパ節と肺への転移が認められた。

人間のがん患者に対する治療法は、この数十年で劇的な進歩を遂げている。しかし、犬に対する化学療法は、20世紀からほとんど変わっていない。人間に対する新たながん治療法が開発されると、まずは犬でテストを行うにも関わらずだ。

38歳のBen Lewisと45歳のChristina Lopesの夫婦は、こうした状況を変えたいと考え、サンフランシスコを本拠とする「One Health」を設立した。同社は、ゲノミクスとAIを組み合わせて、個々の犬に最適ながん治療を行う「FidoCure」を開発し、獣医や調剤薬局と連携して患者に提供している。

FidoCureでは、人間のがん治療から得られた知見を犬のがん治療に活かすだけでなく、犬の治療データを人間の治療に役立てているという。

「犬でテストした結果は、人間向けの治療法の開発に役立てられてきたが、その逆はこれまで行われてこなかった。我々は、それを変えたいと考えた」とLopesは話す。

One Healthは10月29日、Polaris PartnersとBorealis Venturesが主導したシリーズAラウンドで1000万ドルを調達したことを明らかにした。既存株主であるYコンビネータやTau Ventures、アンドリーセン・ホロウィッツ、Lerer Hippeauも今回のラウンドに参加した。これで、One Healthの累計調達額は約1600万ドル(約16億7000万円)に達した。

LopesとLewisは、2012年にLopesの母国であるブラジルで出会った。当時、Lewisはサンパウロで南米向けに動物の健康用品を販売する会社を立ち上げたばかりだった。Lopesもサンパウロで起業を志しており、あるカンファレンスでLewisに出会ったという。2人とも獣医療と動物のヘルスケアに関心があり、意気投合したという。

「動物医療に関するデータ収集が機能不全を起こしている現状を変えなければならないと思った」とLopesは当時を振り返る。

2人は2013年に結婚し、2人の子供を授かった。その後、2016年にサンフランシスコでOne Healthを設立し、FidoCureの開発に取り掛かった。同社は、Yコンビネータが主催した2018年冬季デモデーでプレゼンテーションを行った。

FidoCureの仕組みはこうだ。まず、One Healthは犬の腫瘍の遺伝子シーケンス解析を行い、がんの原因と考えられる変異を見つけ出す。同社は、収集したゲノミクス・データをもとに、患者ごとに推奨する治療方法をレポートにまとめて獣医に提供している。獣医は、このレポートに基づいて治療方法を決定する。

編集=上田裕資

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