中国で最も成功した「赤ワインの魂が宿った白ワイン」の実力

中国、寧夏に位置する「Chateau Changyu Moser XV(シャトー・チェンユー・モーザー15)」

「ボルドーワインの輸入国No.1」をキープし続け、輸入ワインを好む中国人だが、中国のワイン関係者たちには、輸入ワインへの強い対抗心がある。そんな中国のワイン市場が今、急速に成長している。

その代表例が、中国の先駆的なワイナリー「Zhang Yu Wine Company(チャン・ユー・ワインカンパニー)」だ。1892年、中国の外交官だった張備士(チョウピシ)によって設立された、中国で最も古く、年間1億5000万本ものワインを生産している中国最大のワイン製造会社である。

欧米から50万本以上の苗木を輸入し、オーストリアのブドウ栽培家であるヴィルヘルム・フォン・バボー男爵の支援を受け、中国の近代的なワイン生産の道を切り開いた。それから128年を経た今、新たなオーストリア人の醸造家、レンツ・モーザー15世によって次のステージに引き上げられた。

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レンツ・モーザー15世

レンツ・モーザー15世ー中国ワインを世界に広める新たな使命


オーストリアの著名な醸造家であるレンツ・モーザー15世は、16世紀まで遡るワイン醸造家一族、モーザー家の15代目だ。彼の祖父、レンツ・モーザー14世はヨーロッパのブドウの栽培に革命をもたらした人物。

彼が第二次世界大戦後、「株仕立て」に替わり開発した「垣根仕立て」は1950年代から急速に広まり、「レンツ・モーザー仕立て」と呼ばれている。また、無名な品種だった「グリューナー・ヴェルトリーナー」をオーストリアを代表する品種に育て上げた。

6歳から仕立て、剪定、収穫、ブドウ品種の見分け方を学んだモーザー氏はこの品種を世界のプレミアム白ワインとして確立する使命を受け継いだ。

そして2013年、国際的な交流で親密な関係を築いた前出のチャン・ユー社から共同開発の誘いを受けた。舞台はアジアのワイン生産における新しいホットスポット、中国の寧夏(ネイカ)だ。

イスラム教徒の多い寧夏回族自治区は中国西北部、黄河の上流域に位置し、標高は1100メートル。年間3000時間以上の日照時間(ボルドーは年平均2052時間)はブドウを風味豊かに熟し、気温が低い砂漠の夜はワインの鮮度を保つ。
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文=伊東エリーザ

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