「⼤⼈になったハイジ」が提供するアルプスの洗練された空間

文化設備「Allmeinde Commongrounds」(photo by Darko Todorovic)

ヨーロッパで⼀番美しい村とも⾔われ、⾼級リゾート地として知られる「レッヒ」には世界中から旅⾏者が訪れる。特に故ダイアナ妃をはじめ、オランダ、ベルギー、スウェーデン、モナコなどの王侯貴族に愛されるスキーリゾート地として名⾼い。

この村を知り尽くしているヨーロッパの友⼈達から、カティア・シュナイダー(Katia Schneider)と⾔う名前をよく聞く。過去20年間、建築家・プロデューサーとして、村作りに広く関わってきた⼥性だ。

ベイルートで外交官の娘として⽣まれた彼⼥は、⼦供の頃、ヨーロッパの70年代の⼈気番組「ハイジ」でハイジの⼦役を演じた。その後役者として得た収⼊でパリで建築を学び、ウィーン、ローマなどに移り住んだ。レッヒで幼少期を過ごし、ウイーンで哲学を学んだゲロルド・シュナイダー⽒と結ばれ、彼⼥はアルプスに戻り、現在⼆⼈はシュナイダー家によって引き継がれて来た伝統的ホテル「アルムホフシュナイダー(Almhof Schneider)」を経営している。


シュナイダーご夫妻(photo by Christina Holmes)


なぜ洗練された人々がレッヒに集まるのか? この村の魅⼒の仕掛け⼈の⼀⼈、シュナイダー夫⼈が提供する三つの空間を紹介したい。

アルプスの伝統と国際的なアプローチ


レッヒには5つ星ホテルがたくさん並ぶが、憧れるのは絶妙な美学と快適さ、オーストリア流おもてなしを誇る家族経営の「アルムホフシュナイダー」だ。

1451年からアールベルグに住むシュナイダー家のホスピタリティの歴史は、1929年に始まった。「アルプス地⽅全体の『シャレースタイル』と『古い⽊材』ーアルプスの観光地に建てられたほとんどすべてのものが同じように⾒えます」と語るシュナイダー夫⼈は、型にはまったスタイルを避けるために伝統と現代の絶妙な組み合わせを取り入れている。

例えば、⽇本⼈デザイナーの緒⽅慎⼀郎⽒とのコラボレーション。夫人は、2008年の⽇本旅⾏で東京の和⾷料理店「⼋雲茶寮」など緒⽅⽒の創作を知って以来ずっと注⽬しており、共通の友⼈の紹介で彼と知り合うと、⼀緒にガレージの光のドームなどをプロデュースした。オーストリアと⽇本が共有する⾃然と⼈との関わりを考え、コンセプトは「⽉と森」だという。


緒方慎一郎氏プロデュースのガレージ(photo by Darko Todorovic)

「緒⽅⽒はまったく異なる⽂化的背景を持っていながら、伝統と現代のニーズを考えながら⽂化的遺産を扱うというコンセプトが私たちにとても近い」と彼⼥は語る。現在は、2020年12⽉にオープンする予定の新たなプロジェクトにまた⼀緒に取り組んでいるという。
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文=伊東エリーザ

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