ビジネス

2020.11.14 12:00

エストニアからモビリティ革命目指す「Bolt」、26歳CEOの野望

Bolt CEOのマーカス・ビリッグ(Photo by Noam Galai/Getty Images for TechCrunch)

Bolt CEOのマーカス・ビリッグ(Photo by Noam Galai/Getty Images for TechCrunch)

エストニア共和国のモビリティ企業「Bolt(ボルト)」は、マイクロモビリティ分野の巨大な変化に備え、約1億ユーロ(約124億円)を電動自転車や電動スクーターに注ごうとしている。

2013年に配車サービスから始まったBolt(旧名Taxify)は、欧州の45都市から100都市に拠点を拡大し、2018年には電動スクーターのレンタル事業を開始。今年に入りパリやプラハでも、電動自転車のレンタルサービスを始動した。

「7年前に会社を立ち上げた頃は、配車サービスしか眼中に無かった。しかし、2018年頃になると、もっと大規模に都市交通の在り方を変化させたいと考えるようになった」と、BoltのCEOのマーカス・ビリッグは話す。19歳で同社を立ち上げた彼は、現在26歳だ。

Boltは今年5月に1億ユーロをナヤ・キャピタル・マネジメントから調達しており、2021年に、約13万台の電動スクーターや電動自転車を欧州の街路に送り込む。それらの車両の多くは、配車サービスとの組み合わせで利用されることになると、ビリッグは述べた。

配車サービスの需要はパンデミック後に急減したが、その一方でマイクロモビリティへの関心は高まっている。

「ウーバーなどの企業は、今でもパンデミックの打撃から抜け出せないでいるが、直近のトレンドは当社のマイクロモビリティ戦略には追い風となっている。今年4月には約2週間に渡り、人々が自宅にこもった結果、当社のコア事業の売上は80%も落ち込んだ。しかし、その間に電動スクーター部門を拡大させた」とビリッグは続けた。

Boltは今年夏から電動自転車のレンタル事業を開始し、今後はさらに個人の移動ツールに注力していくという。「競合企業が規模の縮小に向かう中で、当社は全体のフリート規模を2倍近くに伸ばしている」

マイクロモビリティを取り巻く環境は変化しつつある。当初は可能な限りの台数の車両を投入し、シェアを奪うのがゴールだったが、パリでは今年から電動スクーターのレンタル企業が3社に絞り込まれ、Boltはそこに参入できなかった。英国でもこの分野には、厳しいルールが設けられた。

「ウーバーなどの米国企業は、欧州の規制当局と対立を続けてきたが、当社の場合は、ルールを遵守し、各国の当局と友好的な関係を結んできた。今になって、その努力が実を結びつつある」とビリッグは話す。

2年以内に黒字化目指す


この分野の競争は激化しており、各社が巨大資本をバックに、シェアを奪い合っている。ドイツの電動スクーター企業「Tier」は先日、ソフトバンクの主導で2億5000万ドルを調達した。スウェーデンの同業のVoiも、英国進出を開始している。

しかし、これらの企業が電動スクーターやキックボートなどの単一のツールに頼るのに対し、Boltは配車サービスとマイクロモビリティ、さらにフードデリバリーを組み合わせたマルチモーダル型の事業で、ウーバーなどを競合に見据えている。

Boltの累計の資金調達額は4億ドルを突破しているが、ビリッグによると同社は米国の競合に比べると、ずっと低コストな運営を続けてきたという。Boltは今後2年以内に回復軌道に乗り、全部門で黒字化を達成する見通しという。

「コスト効率を重視してきた結果、当社の配車ビジネスは既に3分の2の市場で黒字化を果たしている」とビリッグは続けた。

編集=上田裕資

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