ビジネス

2020.11.14

アプリ使用時のプライバシー保護 アップルが見出した有効策

Getty Images

アップルは12月8日から、アプリ開発者に対し、各アプリのプライバシーに関する詳細情報のアップストア上での掲載を義務付ける。これは食品の栄養成分表示と似たようなもので、アプリが収集するデータのタイプ、収集したデータの使用方法、ユーザーのプロフィルとの関連付けの有無など、ユーザーのプライバシーに関するすべての情報が掲載され、条件が変わった際のアップデートも義務となる。

アップルによるプライバシー保護努力は、今や私たちの文化の一部と化した問題と対立するものだ。その問題とは、プライバシー保護方法が複雑化すると、人は単にそれを無視して、利用規約をろくに読まずに先へ進んでしまう、というものだ。アップルはこれまで開発者に対し、アプリのアップデート内容の説明は単に「バグ修正とパフォーマンスの改善」などではなく、詳細に記載するよう再三要求してきたが、開発者側は従っておらず、ユーザー側もその情報を参考にはせずに自動的にアプリをアップデートする人が多い。

同じことは例えば、1年半前に施行された欧州連合(EU)一般データ保護規則(GDPR)にも言える。企業のウェブサイトの多くは今も、何らかの形でこの規則に違反しており、ユーザーが情報収集に同意しなければサイトを閲覧できない「クッキーウォール」を利用するなどしている。ユーザーに長文の規約を読ませ、収集した情報を利用する可能性のある企業の膨大なリストの同意事項をひとつひとつ確認させることは、閲覧者と企業、規制当局にとって非常に面倒なものだ。閲覧者は最終的に、2つのグループに分かれる。ひとつは「全てにイエス」として全条項を無条件に受け入れる人。もうひとつは、特殊なソフトウエアをインストールして、規約の内容にかかわらず、クッキーと自分のプライバシーを自分で管理しながら閲覧する人だ。

プライバシー保護にはバランスが必要だ。サービスプロバイダーに対してどの情報を提供するかをユーザー側が選択できるだけではなく、それを明確かつ簡単に行えるようにしなければいけない。サービスやコンテンツへアクセスするたびに長い規約を読ませることは、手軽に利用したいというユーザー側の気持ちにつけこんだ悪質な行為となってしまう。企業各社は法規制を回避する方法を習得するようになっており、義務化された告示情報を全部含めつつも、法律用語をちりばめた複雑な内容にすることで、普通の人なら全部読まないような面倒な文章にして表示するようになった。

各アプリに詳細なプライバシー情報を記載させるというアップルの策は、悪いアイデアではない。食品の栄養成分表示は、導入された当初、ほとんどの人が複雑すぎて理解できないと感じていた。しかし時間の経過とともに、多くの人がそれを理解したり、少なくとも購入を判断するためのヒントとしたりするようになった。まずはツールを開発し、その後でユーザーに読み方と使い方を教えればよいのだ。

編集=遠藤宗生

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