筆者が運用会社で働いていた時は、SRI(Socially Responsible Investment=社会的責任投資)という言葉をよく耳にしたが、たしかに最近はESG全盛である。今回は学生と一緒にESG投資について確認した内容を紹介しよう。
ESG投資とサステナブル投資
他人のお金を預かって運用をする機関投資家は、当然だが将来的に価格が上昇すると期待できる投資先に運用資産を振り分ける。投資対象が株式であれば、株価の上昇が期待できる企業を探すことになる。
それでは、将来のことを予測することなど誰もできないのに、どのようにして投資する企業を探すのか。
これまでは決算のたびに発表される財務諸表を基に、売上高や利益、原価・人件費などのコスト、資産や負債といった財務データを分析して、本来であればこれくらいの株価が妥当だろうという目算に対して、株式市場でついている株価が安い企業へと投資をしてきた。
しかし、ESG投資の場合は、これとは違う観点も入り込んでくる。
そもそもESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)のこと。つまりESG投資とは、財務情報以外のこうした要素も考慮して投資をしようという考え方のことだ。
それでは、この3つの要素とは、具体的にどのようなものを指しているのだろうか。
まず「環境」とは、CO2の削減や脱炭素経営などに力を入れているか。「社会」は、働き方改革やダイバーシティ(多様性)推進などに力を入れているか。「企業統治」は、公正で透明な企業経営や積極的な情報開示などに力を入れているか。ESG投資では、このような観点から企業を評価していくことになる。
筆者が運用会社で働いていた時はSRIという言葉をよく耳にしたと冒頭で書いたが、実は当時からESG投資のような手法は存在していた。
たとえば、投資先を探す際に、社会や将来世代によくないことをしていると考えられる企業を最初から省く「ネガティブスクリーニング」や、環境破壊につながる事業や兵器産業に属する企業から投資を引き上げる「ダイベストメント」、金銭的なリターンを追いつつも、貧困層支援や教育問題など社会的課題の解決に取り組む企業に投資をする「インパクト投資」などがそれにあたる。