もちろん、たった1年だけの結果を見て、ESG投資は有効であると言う気はないが、過去にESGを評価する企業の幹部に、ESGは本当に投資パフォーマンスを押し上げるのかと尋ねたことがある。
彼によれば、ESGの歴史はまだ浅く、統計的にそのような傾向があるとは断言できないと前置きはしたものの、投資家のESGへの関心が高まれば自然と資金が流入してきて、結果としてESGの評価が高い企業の株式に買いが集まり株価が上がるという事象は十分に起こりうるということだった。
しかしながら、ESG投資には課題も多い。
まずはESGの評価が、一部の機関に依存してしまっていることが挙げられる。財務情報での分析であれば、各運用会社それぞれにアナリストがいるし、個人投資家でもできるが、ESGは分析範囲が広すぎるうえに、各分野で専門性が求められるため、誰もができるわけではない。
そこで、現状は大手の格付け機関などのESG評価に機関投資家も依存しているわけだが、格付け機関の評価がどこまで正しいのか、それぞれの機関にバイアスがあるのではないかなどの問題がある。実際、企業からは格付け機関によるESGの評価に満足していない声も聞くことがある。
また、企業によって、ESGに関する情報開示に格差がありすぎることも問題であろう。国によってもESGに関する情報開示の量や質に差はあるし、ESGに関する情報を開示するのにもコストがかかるため、同じ国の中でも企業規模や業種によっても格差が生じてしまう。その結果、きれいな横比較ができなくなってしまい、分析の質も下がってしまうのだ。
さらにESGという大きな3つの観点からすると、企業業績と違い、将来予想の難易度が高い。技術革新の速度、気象や環境の変化速度、政治や政策の変化などまで考慮しなければいけないからだ。
そして、投資家の観点からすれば、前述の通り、ESG投資がパフォーマンスの観点からどれほど優位なものかという点を、現時点では断言できないことが何よりも問題だろう。ということで、この記事を通して、ESGの意味や課題などについて広範に理解していただければ幸いだ。
連載:0歳からの「お金の話」
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